散歩五百七十三話 また会いましょう

 どたどたどた。


「「赤ちゃんに会いに来たよ!」」


 ここで、荷物運びを終えたシロとフランが元気よく病室に入ってきた。

 でも、流石に騒々しいから注意しないと。

 そんな事を思ったら、僕よりも先に動いた者が。


「寝ている赤ちゃんが起きちゃうよ!」

「もっと、ゆっくり歩かないと!」

「「ごめんなさい……」」


 おお、ホルンとヴィヴィがシロとフランの事を注意しているよ。

 アオも、触手をふりふりして二人を注意しています。

 でも、二人の声もそこそこ大きいから気を付けましょう。

 という事で、さっそく赤ちゃんを対面です。


「うにゅにゅ……」

「「わあ、寝ている! 可愛いよ!」」


 口元をもごもごさせながら寝ている赤ちゃんを見て、シロとフランはメロメロになっています。

 何故かシロとフランの後ろでホルンとヴィヴィがドヤ顔でうんうんと頷いていたけど、赤ちゃんの見せるあどけない表情は破壊力満点だもんね。


「我が家でも、そろそろお義姉様が出産するんです」

「まあ、そうなんですね。元気な赤ちゃんが生まれてほしいですわ」


 スーと元侍従は、ヴィクトリー男爵家でそろそろ生まれる赤ちゃんについて話をしていた。

 赤ちゃん関連の話題だから、女性陣も笑顔で話をしていました。


「赤ちゃんって可愛いね」

「僕にもこんな時があったかな?」

「うーんどうだろう」


 因みに保護されている子どもは、狐獣人の女の子とトラ獣人の男の子の双子ちゃんです。

 この子たちもやせ細っているので、見た目は元気でも直ぐに病気にかかる恐れがあります。

 スラム街にいる人は全体的に痩せている人が多いので、これから冬になるから風邪が流行しないか少し心配です。

 新年前にまたスラム街の教会で奉仕作業を行うそうなので、その時に情報を集めておこう。


「後は、孤児院の状況がどうなっているかだね。もしかしたら、これからも保護される子どもが出てくるのは間違いなさそうだし」

「その点は大丈夫です。孤児院に少し空きがありますし、他の貴族から寄付を頂いて新たな建物を建設する事が決まりました。スラム街に住んでいる職人にも手伝って貰うそうです」


 僕の質問に、スーが淀みなく答えていた。

 対策が取られているのなら問題ないし、恐らく僕たちも建設のお手伝いをするだろう。

 さて、長居をしてはいけないので、次の病室に移動しましょう。


「「「「また来るね」」」」

「「「ばいばーい」」」


 シロ達も保護されている子ども達と挨拶をして、僕とスーの後をついてきました。

 冬になって患者が増えているので、当面週一回のペースで治療院での治療を行う事になりました。

 その間に、赤ちゃんはどんどんと成長していきそうですね。

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