散歩の五百七十二話 赤ちゃんと再会します

 大部屋には一部屋十人以上入院していて、症状も骨折から病気までバラバラです。

 いつも通り重症者はスーが受け持って、中等症は僕とアオ、ホルンとヴィヴィが軽症患者を担当します。


 シュイン。


「胸とお腹以外に、腰も悪いですね。纏めて治療しますよ」

「おお、悪いね。年だから中々体が良くならなくてさあ」


 僕が担当したお爺さんは、体中にダメージを抱えていました。

 年配の人が入院しているケースが多く、若い人は骨折以外は殆ど見かけません。

 ある意味、年配の人達のセーフティーゾーンになっているのかもしれない。


 シュイーン、ぴかー!


「はい、これで胸の病気も良くなりましたよ。お大事にして下さいね」

「スーザン殿下自ら治療頂けるなんて。本当に感謝です」


 スーの事を知っている人もいたけど、それでもスーは関係ないと普通に治療していきます。

 今日は冒険者として依頼を受けているし、王族の義務とは少し違うもんね。

 ホルンとヴィヴィも頑張って治療していき、順調に治療を終えていきます。

 そして、昨日保護された子ども達がいる部屋に着きました。


「「「あー、お姉ちゃんだ!」」」

「ふふ、こんにちは。元気にしていたかな?」

「「「元気!」」」


 三人組の子ども達は、とても良い笑顔でスーに抱きついていきます。

 スーも、ニコリとしながら子ども達の頭を撫でていました。

 ついでに子ども達の体調をチェックしたけど、痩せている以外は特に問題なさそうです。

 その間に、僕達は元侍従と赤ちゃんをチェックします。


「「「すー、すー」」」

「わあ、赤ちゃん寝ているね」

「とても可愛いね」

「ふふ、そうね。いっぱいお乳も飲んで、お腹いっぱいなのよ」


 赤ちゃんはベビーベッドですやすやと寝ていて、体調も良さそうです。

 ホルンとヴィヴィの視線は、もう赤ちゃんに釘付けです。


 ぴかー!


「うん、体調は良さそうですね。食事をとらないと母乳が出ないですから、キチンと食べて下さいね」

「……そういえば、シュン様は冒険者でしたね。息子の為にも、キチンと栄養をつけていきます」


 元侍従の人が僕を見て一瞬戸惑っていたけど、僕は料理人じゃなくて冒険者ですからね。

 ちょっとガクリとしながら、僕は赤ちゃんについて質問しました。


「赤ちゃんも健康そうで、本当に良かったです。名前は決まりましたか?」

「はい、ガイと名付けました。立派に成長して欲しいので、強い名前をつけました」

「「ガイちゃん!」」


 元侍従がニコリとしながら答えてくれたけど、僕も良い名前だと思うよ。

 それにだいぶ心も落ち着いてきて、昨日よりもかなり表情が穏やかになっていた。

 やはり、安心できる環境にいられるってのが大きいですね。

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