散歩の五百七十話 みんなでご褒美を食べましょう

 女性もようやく落ち着いたので、治療をして炊き出しを食べてもらいました。

 相当お腹が空いているのか、一気に炊き出しの料理を食べちゃいました。


「炊き出しとは思えないくらい、とても美味しい料理です」

「ふふ、かの有名な雷撃の料理人の作る炊き出しですからね」


 しかしスーよ、おかわりをしている女性にドヤ顔で僕の二つ名を教えないで下さい。

 女性も、どう対応すれば良いか困った表情をしている。


「ひとまず、保護した者は教会の治療院で経過観察を行いましょう。孤児院に入るにしても、体調を整えてからですな」


 こういう事態も想定していたのか、ヘーベル枢機卿は直ぐに部下に指示を出していました。

 女性も保護された小さい子どもも、痩せている体を元に戻さないといけないですね。

 こうしてスラム街の教会での炊き出しは終わり、集めた情報は分析して対応するそうです。

 しかし、炊き出しのところに戻ると、まだ色々と焼いている人がいました。


「くるくるくる。できた!」

「これが、西の辺境伯領で名産となったまんまる焼きですわね」

「様々な中身が入っていて、とても美味しいですわ」


 まずはホルンがお得意のまんまる焼きを作って、貴族令嬢に配っていました。

 醤油ベースのソースをつけて、とても美味しそうに食べていますね。

 そして、こちらでも焼き物をしていました。


「ひっくり返すよ、よっと」


 ジュー。


「わあ、凄い凄い!」


 こちらでは、シロがパンケーキを焼いて上手くひっくり返していました。

 シロの見事な手さばきに、ジェフちゃんは拍手をしながら大興奮です。

 パンケーキも小さく切って、ジャムをつけて貴族令嬢や他の人に配っていました。

 ジェフちゃんは、既にパンケーキを食べ終えたみたいですね。

 主食は食べ終えたみたいなので、僕は別の物を作ろう。

 薄く生地を焼いて、クリームとフルーツでデコレーションします。


「スー、クレープ作ったから食べてみ……」

「さっそく頂きますわ。うーん、とっても生地がモチモチしていて、とても美味しいですわ」


 スーは、試食用のクレープをあっという間に食べちゃいました。

 表情から、満足しているのが見て取れます。

 次々にクレープを作っていき、フルーツもブルーベリーやイチゴにメロンなど色々と変えていきます。

 お好みで、手作りジャムもつけましょう。


「うーん、教会の炊き出しなのに晩餐会で出てくるスイーツを頂いていますわね」

「流石は雷撃の料理人様です。料理に一切の妥協がないですわ」


 アナ様も貴族令嬢にも、僕たちが作ったスイーツは大好評でした。

 まだ課題は残っているけど、まずはスラム街での炊き出しは無事に終わりましたね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る