散歩の五百六十五話 スラム街の教会に到着

「おお、もう来ていたのか。準備は進んでいるようだね」

「ヘーベル枢機卿、何でここにいるんですか?」

「今日は令嬢のお守りだよ。スラム街に行くのもあるからね」


 僕に話しかけてきたのは、鎧に身を包んでいる教会聖騎士団団長のヘーベル枢機卿でした。

 そういえば、前回の大教会前での炊き出しでも、聖騎士団とかを助っ人に頼んでいたっけ。

 僕たちとすれば、馬とかが捕まえたならず者を運搬する手が増える方がありがたいです。


「「「「「準備できたよ!」」」」」


 僕が食料などをアイテムボックスにしまい終えたところで、同じく教会内で調理器具をしまい終えたシロ達とジェフちゃんが僕のところにやってきた。

 調理器具をしまったのはアオだけど、ここで余計な事は言いません。


「さて、他の人も集まった様だし、さっそくスラム街にある教会に向かおう」

「「「「「おー!」」」」」


 ヘーベル枢機卿がシロ達とジェフちゃんに声をかけると、五人は元気いっぱい声を上げていました。

 そして、ジェフちゃんはさり気なく僕たちの乗るヴィクトリー男爵家の馬車に乗り込んできました。

 スーはいつの間にかアナ様と共に王家の馬車に乗っているし、もう自由って感じですね。

 ということで、アヤが御者をしながら馬車はスラム街にある教会に向かいました。

 大教会から少し距離があり、ゆっくりの速度もあって二十分以上時間がかかりました。

 スラム街の教会なので小さいのかなと思いつつ、そこそこの広さがあるのにはビックリしました。

 まずは、教会の代表を務める司祭様に挨拶をします。


「皆さま、ようこそ当教会にお越しくださりました。教会を代表して、お礼を申し上げます」

「司祭様、私達こそ本日はお招き頂き感謝申し上げます」


 年配の女性がこの教会の代表らしく、僕達の代表であるアナ様とにこやかに挨拶をしていました。

 教会内では、他のシスターさんが椅子を拭いたり床を掃いたりしていました。


「ねーねーシュンお兄ちゃん、シロ達もシスターさんのお手伝いをして良いかな?」

「シスターさんの邪魔をしなければ良いよ。僕とアオは炊き出しの準備をするから、アイの言うことをちゃんと聞くんだよ」

「「「「「はーい」」」」」


 ジェフちゃんまでシロ達と共に元気よく手を上げていたけど、こういう事は未来の国王として積極的に経験して欲しい。

 スーはアナ様と一緒に司祭様と話をしているし、あちらはあちらで王族の勤めを果たしています。

 アヤもスーの近くに控えているし、何かあっても大丈夫でしょう。

 僕は、アオと一緒に教会の前に広がる庭に移動します。

 今日は、教会の庭で炊き出しと無料治療を行います。


「では、炊き出しテントの横に治療用のテントを設置しましょう」

「じゃあ、どんどん荷物を出していきますね」


 僕とアオは、担当のシスターさんとどこに何を設置するか話し合いながらアイテムボックスから荷物を取り出します。

 聖騎士と貴族令嬢も手伝ってくれながら、あっという間に会場設置が完了しました。

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