散歩の五百五十八話 気合を入れての服選び
ゆっくりと休んだ翌朝、僕達は屋敷のとある部屋に集まっていました。
僕とシロ達は薄着になっていて、侍従が事細かく体を採寸していました。
「うーん、謁見用の服はあまり派手な色合ではないものがいいですわね」
「そうですね。いまお持ちの青と白をベースにしたものに、刺繍を施したものが良いかと思われます」
例の僕とシロ達の服を作る件で、朝からヴィクトリー男爵家の御用商会の担当者が屋敷に来ていました。
僕の謁見用の服の色を決めるのに、僕ではなくスーと担当者で話し合っていました。
「ふふふ、旦那様の服を用意するのは妻の仕事なのよ」
「あの、僕はまだスーと結婚していないんですけど……」
「あと数年後の話でしょ。何もおかしい話ではないわよ」
セーラさんも面白そうに部屋にやって来ていたけど、スーが張り切っているのもあるので何も言えません。
基本的に謁見用の服の採寸が終われば僕はお役御免なので、今度はシロ達の服を選んでいきます。
「王都は南の辺境伯領と比べても寒いみたいだから、ちゃんと暖かいものを選ばないと」
「皆さま羽が背中にございますので、マフラー等も併用された方が良いと思われます」
フラン、ホルン、ヴィヴィは種族特性で背中に羽があるので、着られる服も限られます。
フランは立派な尻尾も生えているので、ワンピースタイプは不可です。
中々服選びが大変なんだけど、そこそこ動きやすそうな服を選び終えました。
成長すると魔力のお陰で冬も軽装でも大丈夫らしいけど、まだ全員五歳児なので無理はできません。
「はあ、疲れたよ……」
「「「疲れた……」」」
シロ達はジッとして採寸をしていたり、何回も服を着替えていたので朝からかなり疲れていました。
特に、フラン、ホルン、ヴィヴィは間違いなくお昼寝をするくらいへとへとです。
しかし、この人は元気いっぱいでした。
「袖のボタンは、四つ配置しましょう。勲章を付けるスペースも、広めにしておいて良いですわね」
「シュン様は数多くの功績を打ち立てておりますから、勲章を付けるスペースはひろくても良さそうです」
シロ達の服も選び終わったので、僕達は着替えて紅茶を飲んでいました。
シロ達はお菓子を食べて元気を補充中だけど、スーはお菓子を食べなくても元気いっぱいでした。
「スーは、こだわる事にはとことんこだわるわよ。最低でも、あと三十分は終わらないわよ」
「「「「ええー!」」」」
苦笑しながら話したセーラさんの言葉に、シロ達がブーイングしていました。
しかし、当のスーの耳に入ることはありません。
そして、気がつけばリアーナさんのところに行く直前まで、スーは僕の謁見用の服の構成をあーだこーだやっていました。
「シュンさん、良い出来の服ができそうですわ」
「あ、ありがとう……」
やりきったという表情をしているスーを見ると、僕は何も言い出せなくなりました。
因みに、全員分の服のお金は僕が払いました。
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