散歩の五百四十九話 みんなで作った料理を試食します
天ぷらもどきを作り終えたので、今度はシロが切った野菜を使って豚汁もどきを作ります。
僕の横では、アオがかえしと出汁を作っています。
本当はかえしは冷蔵庫とかで熟成した方が美味しくなるけど、今日は作りたてを提供します。
「ねーねー、試食はまだ?」
「良い匂いがするよ」
「とっても楽しみだよ」
「お腹ペコペコ」
「もうちょっと待ってな。とん汁の味見をさせてあげるね」
でんぷん粉作りを終えたシロ達が、僕とアオのところにやってきました。
因みに、でんぷん粉の水分は魔法の訓練を兼ねてフランの水魔法で飛ばしました。
普通の魔法の訓練よりも楽しかったらしいので、今後の魔法の訓練に料理を取り入れようかなと思いました。
そして、そろそろ料理が出来たので試食して貰おうとした時でした。
厨房に、スーが顔を見せました。
一瞬夕食が待ち切れないのかなと思ったけど、別件の様です。
「代官が来たのですけど、一緒に夕食を食べながらお話をするのは如何でしょうか?」
「全然問題ないよ。ちょうど良いから、試食して貰おう」
「分かりましたわ。では、その様にしますね」
代官の用件が何だか分からないけど、特に急ぎではなさそうです。
なら、小分けにして少しずつ味わって貰いましょう。
「「「「おいしー!」」」」
試食組も大満足の出来みたいなので、さっそく盛り付けて食堂に運びます。
さてさて、どの様な感想が出てくるかな?
「お待たせしました」
「いやいや、こちらこそ突然お邪魔して申し訳ありません」
食堂にはスーと代官がいて、僕たちが料理を持ってくると立ち上がって一礼をしてきた。
配膳をしながら、簡単に話を聞くことにします。
「実は、シュン様に温泉街の名産のアイディアを頂戴しようかと思いまして。夕方にお戻りになるとお聞きしたので、勝手ながらお邪魔いたしました」
「そうですか。それは良いタイミングですね。全て、温泉街の食物を使用した料理を試してみました」
「雷撃の料理人が作る料理となると、私も期待しております」
ということで、さっそく料理の説明をします。
「こちらは、小麦粉を冷水と卵で溶いた衣をつけて揚げた物になります。野菜の他に、湖で獲れる魚やエビも使用しました。塩もしくはつゆで召し上がって下さい」
「見た目にも鮮やかな料理ですね。晩餐会にも出せそうな一品ですわ」
「それでいて、作り方もとても簡単です。職人の技量が出る料理ですな」
やっぱり、天ぷらは見た目も派手なのでとても高評価です。
スーも、代官も、見た目と味に驚いていました。
「こちらは、じゃがいもから取れたでんぷんをとろみに使用した、ナスのあんかけそぼろとおひたしです。大根のそぼろもありますので、食べてみて下さい」
「お出汁が染み込んでいて、とても深い味わいですわ。これがナスを使っているなんて、とても信じられません」
「名産の麺料理にも合いますし、アレンジもできますな。いやはや、これは凄いです」
和風の料理だけど、うどんもどきがあるなら全然平気だと思います。
あんかけはアレンジしやすいので、どんどんと作って貰いましょう。
「うどんとお蕎麦は、小鉢に入れてそれぞれ味を変えております。普通のものに大根おろしをかけたもの、自然薯をすりおろしたものと、少し味をつけた卵を乗せています。地元特産のきのこを使ったものは、季節限定メニューにしても良いかと」
「温かい物の他に、冷たくした物もあるんですね。四季に関係なく楽しめますわ」
「様々な具材もそうですが、何よりもこのつゆが素晴らしい。えっ、このスライムがつゆを作ったんですか!」
アオがつゆを作った事に代官もビックリしているけど、メインディッシュも概ね好評です。
僕の横ではシロ達が夢中になってうどんと蕎麦を食べているけど、一生懸命に食べてくれるのは作った者としてとても嬉しいです。
「レシピは、全てこの別荘の料理人に伝えました。手間がかかるものもありますが、特別なものを楽しみに来ている観光客には受けが良いと思います」
「さっそく、明日伺わせて頂きます。ご迷惑ではないかと思いましたが、思い切って伺って良かったです」
この程度の料理だったら全然広まっても問題ないし、更にプロの手で美味しいものにして欲しい。
こうして、ニコニコしながら食べてくれるのが何よりも良いですね。
因みにスーが通信用魔導具で陛下に料理の事を伝えたら、さっそく作らせると言っていたそうです。
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