散歩の五百四十話 いざ出航です
「皆様、ご乗船頂きありがとうございます。本船は、まもなく出港いたします。一時間の船旅をお楽しみください」
船内アナウンスがあったので、僕達は全員手すりに捕まります。
すると、ゆっくりと観光船が進み始めました。
「「「おおお、進んでいる!」」」
「何だか、少し変な感覚ですね」
観光船はゆっくりと前に進み始め、シロ達だけでなくスーも少し興奮した様に話してきました。
微速前進を進めている内に、観光船は少しずつ速度を上げていきました。
「わー、すごーい!」
「すすんでいるよ!」
「すごーいすごーい!」
船首にはいつの間にか多くの子どもが集まってきて、船が進む様子に興奮していました。
子どもがはしゃぐ光景は、どの世界にいっても全く同じですね。
そんな楽しそうな子ども達の姿に、僕やスーだけでなくアヤやアイも目を細めていました。
「お姉ちゃん、お船って凄いね!」
「ええ、そうね。凄いわね」
そして、見知らぬ女の子がいつの間にかスーのドレスを掴んでスーにニコニコ顔で話しかけていました。
スーも、女の子の頭を撫でながら優しく話し返していました。
うーん、ほのぼのする光景ですね。
「ああああ、あのお貴族様申し訳ありません!」
「ふふ、お気になさらずに。こうして楽しんでいるのですから」
女の子の母親が慌ててスーに謝ってきたけど、スーはこの位なら全然気にしないだろう。
現に、アヤもアイも女の子を引き離したりしていません。
「おー、パパ高いよ! 遠くがよく見えるよ!」
「ねーねー、次はフランだよ!」
「ホルンも抱っこして」
「はいはい、順番だからね」
僕はというと、もっと遠くをみたいというヴィヴィの事を抱っこしていた。
そんな僕の横では、ヴィヴィの事を羨ましそうに見ているフランとホルンの姿がありました。
因みにシロは、アオを頭に乗せながら他の子どもと一緒に船の先頭に移動していました。
「皆さま、飲み物はいかがでしょうか? 甘い飴もありますよ」
「「「かうー!」」」
ある程度抱っこをし終えたところで、移動販売の売り子がやってきた。
フランとホルンとヴィヴィが一目散に売り子の方に移動したので、僕は三人の後を追っていきます。
「うーんとね、フランはこれ!」
「ホルンはこっちだよ」
「ヴィヴィも買うよ!」
「はい、落とさないようにね」
三人が選んだ物を売り子のお姉さんから受け取って、僕が三人の選んだ品物のお金を払います。
三人とも、ジュースと飴を選んでいます。
船首にはベンチがあるので、僕達はそこに座りました。
「みんなの分は、シロが買ってあげるよ!」
「「「わーい」」」
そして、船首に集まった子ども達にシロとアオが飲み物を奢ってあげていました。
盛り上がる子ども達を見て、この位は良いでしょうと僕もスーも大目に見ていました。
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