散歩の五百三十五話 ドラゴン治療後の森の調査

 ドラゴンの治療をした翌日、僕たちは冒険者スタイルになってリアーナさんと一緒に森に向かいます。

 ドラゴンがいなくなった後の、森の生態調査を行うためです。


「リアーナ、悪いわね。私たちの活動についてきて貰って」

「いえ、私たちも元々予定はありませんでしたし、良い経験になります」


 昨日ドラゴンの治療についてきた貴族のお嬢様の多くが昨日今日で王都に帰るので、明日王都に帰る予定のリアーナさんについてきて貰いました。

 生態調査だし、特に魔物討伐をする予定もありません。


「あっ、薬草がいっぱいあったよ!」

「本当だ、たくさんあった!」

「いっぱい採っちゃおう」

「プチプチプチ」


 こうして、沢山生えている薬草を採ったりしながらまったりと森の調査を進めます。

 森に不審な気配は感じられないし、動物も魔物も本来の生息域に戻ったみたいですね。

 僕たちも頑張りすぎない程度に、休みながら調査を続けます。


「しかし、昨日ホルンちゃんが作った料理はとても美味しかったですわ。中身が何か分からないところが面白いですわね」

「まんまる焼きだよ。シュンお兄ちゃんが考えたんだよ!」

「本当にシュンさんは色々な食べ物を考案しますわ。こうして、冒険者活動中に美味しいものを食べられるなんて想像つきませんわ」


 昨日の昼食でフランが焼いたまんまる焼きが、貴族のお嬢様に大好評だった。

 あくまでも屋台で食べるものだけど、それがとても美味しかったらしいです。

 僕はというと、甘いものも作って提供していたっけ。

 さらりと温泉街の責任者が混じって、色々使わせてもらうって興奮していた。

 有効活用して貰う分には、僕も文句は言いません。

 因みに、今日の昼食はお肉サンドイッチと野菜スープという簡単なものです。


「5歳児らがまだ体が小さいので、栄養には気を付けているんですよ」

「全員違法奴隷として捕まっていた辛い過去があるので、普通の子よりも体が小さいんですよね」

「これでも、だいぶ体が大きくなったんですよ。最初はガリガリでしたし」

「「「うまうま」」」


 リアーナさんがお肉サンドイッチを美味しそうに食べる三人を見て、少し悲しそうな目をしていました。

 僕も、当分は三人の栄養に気をつけないとなあ。


「「ヒヒーン」」

「お馬さんも、いつでも行けるってよ」


 馬も、飼い葉を食べて元気モリモリです。

 今日はヴィヴィも馬に乗って移動しているけど、とても楽しそうにしています。


「じゃあ、そろそろ冒険者ギルドに戻ろう。危ないのもなさそうだね」

「そうですね。森も、とてもいい感じになっていると思いますわ」


 昼食の後片付けをして、僕たちは冒険者ギルドに戻ります。

 帰り道も、ゆっくりぶらぶらしながら戻っていきます。


「薬草も見たが、特に異常はなかった。生態も普通に戻っているなら、森の立ち入り制限解除をして良いだろう」

「僕もそう思います。もちろん普通に戻っただけなので、いつも通り動物や魔物に気をつけないといけません」

「そりゃ、その通りだ。冒険者なら分かっているだろうな」


 冒険者ギルドに戻って、ギルドマスターに調査結果を報告します。

 植生も問題ないという事なので、これで僕たちの任務は完了です。


「しかし、昨日ドラゴンが湖の上を旋回しているのは良い光景だった。湖に伝わる新たなドラゴン伝説として刻まれるだろうな」

「温泉街の人も大喜びだったみたいですね。集客にも影響がありそうです」

「組合長は、さっそくドラゴン伝説が復活したとアピールしていたぞ。まあ、このくらいなら問題ないだろうな」


 商魂を見せているくらいなら、微笑ましいくらいです。

 森も正常になって、温泉街も賑わって、万々歳ですね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る