散歩の五百三十一話 エンシェントドラゴン
少し進んで行くと、大きな洞窟みたいな場所に出た。
道中沢山のドラゴンに挨拶されつつ、少し奥に進む。
すると、白銀に輝く大きなドラゴンが目の前に現れた。
黄金色のドラゴンとほぼ同じくらいの大きさで、更に迫力があるぞ。
すると、また念話で白銀のドラゴンに話しかけられた。
「我はエンシェントドラゴンだ。人の子よ、仲間が世話になった」
えっ、目の前にいるのはまさかのエンシェントドラゴンですか?
いきなりの自己紹介にビックリしつつ、エンシェントは更に話を続けた。
「仲間の話では、執事みたいな服の者が異様に強かったと言っていた。それ以外は、雑魚だという」
「執事って!」
「どうやら、人の子も知っている様だな。奴は危険だ」
ここで、まさかの人物の話が出てきた。
ブローカー侯爵家でガンドフさんと軽々とやりあった、あの闇組織幹部の執事だ。
あの執事なら、ドラゴンに大怪我させるのも頷ける。
「いずれにせよ、我らを動けなくする思いもあったのだろう。素材を取れなくても、我らを動けなくすれば国との盟約が果たせなくなる」
「盟約、ですか?」
「そうだ。詳しくは、お主の後ろにいるおなごに聞くが良い」
僕が後ろを振り返ると、そこにはドラゴンの治療を終えたスーの姿があった。
どうやら、他の人には洞窟に入るのを遠慮して貰ったみたいだ。
「スー、奥にいるドラゴンはエンシェントドラゴン様だ」
「はい、他のドラゴンに軽く説明して貰いました。エンシェントドラゴン様、王国王女スーザンと申します」
「うむ、王女がここにいて話が助かる。それに、そなたは優秀な治癒士の様だな」
スーがエンシェントドラゴンに綺麗なカーテシーで挨拶し、エンシェントドラゴンも満足そうに頷いていた。
スーは、王女としてドラゴンとの盟約を知っているみたいだ。
「シュンさん、簡単に言いますと国の危機の際に王族の求めでドラゴンが助けに来るという盟約です。その代わりに、この廃坑を提供させて頂きました」
「我らは常に絶滅の危機にあった。それは、安心して繁殖できる環境がなかった為だ」
冒険者に素材を狙われる可能性があるし、現に闇組織に襲われた。
そういう意味では、ドラゴンも中々難しい存在なのだろう。
「治療した若いドラゴンは、盟約関係なしにリターンマッチをすると意気込んでおりました」
「ははは、元気で結構。しかし、まだ弱いから我が鍛えてやらなければならないな」
エンシェントドラゴンが笑っている横で、黄金色のドラゴンが恥ずかしそうにしていた。
そういえば、このドラゴンもあの執事にやられていたっけ。
ともあれ、若いドラゴンは暫くエンシェントドラゴンからかわいがられそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます