散歩の五百三十話 さっそくドラゴンの治療を開始します
出発から数分もすれば、目的の山脈が見えてきた。
山脈の中腹にあるちょっとした台地が到着地点みたいなのだが、ここで僕はある事に気が付いた。
「おや? あれは結界みたいな物かな?」
「気が付いたか。あれは我々の住む所を守る物だ。いまお主らを包んでいる結界と同様に、悪意のある者は寄せ付けない効果がある」
黄金色のドラゴンが僕の疑問に答えたが、あの台地を覆う巨大な結界が設置されているのか。
となると、闇組織はこの結界を破壊してドラゴンの住処に侵入したのか?
「いや、それは違う。たまたま、若いものと結界のすぐ外で狩りの準備をしていた所を狙われたのだ。幸いにして結界は無事だったが、念の為に結界を強化しある」
おう、それは何ともタイミングが悪い。
恐らく、近くに潜んできた闇組織の構成員がちょうど狙える位置に出ちゃったんだ。
因みに、居住区域は二重の結界にして万が一に備えているそうです。
そうこうしている内に、台地にあるドラゴンの里に到着です。
ドラゴンは僕たちを包んでる光の玉を地面に下ろして、光の玉を解除しました。
「わあ、ここがドラゴンさんの里なんだ。でも、お山の中なのにそこまで寒くないね」
「結界のお陰で、ある程度の温度が保たれているのだ」
シロの疑問に黄金色のドラゴンが答えていたけど、そこまでできる結界ってとんでもない性能だ。
流石はドラゴンといえよう。
「簡易的な結界なら、我が渡したうろこを使えば可能だ。恐らく、そなたならできるだろう」
あの、そんな僕に向けてニヤリとしないで下さいよ。
うろこを加工した事すらないし、ましてやドラゴンのうろこなんですから。
ともかく、目の前の怪我人ならぬ怪我ドラゴンを治療しないと。
僕たちは、前を行く三頭のドラゴンの後をついていきます。
「あっ、血の匂いがするよ!」
「本当だ!」
そして、鼻の良いシロとフランがアオと一緒に駆け出しました。
ホルンとヴィヴィも続きます。
その先には、怪我をした四頭のドラゴンの姿が。
怪我をしたドラゴンの側にも、数頭のドラゴンが心配そうに怪我をしたドラゴンを見ていました。
色は赤だったり白だったり黄色だったり様々で、大きさは黄金色のドラゴンより小さく二十メートルないかです。
しかし、羽が大きく傷ついていて、体にも複数の傷があって見るからに痛々しいです。
そんな傷ついたドラゴンのところに駆けつけたシロ達が、さっそく治療を開始しました。
シュイーン、ぴかー。
治療を行えるのはアオとホルンとヴィヴィだけど、シロもフランも心配そうにドラゴンを見つめていました。
ここにいる令嬢と共に僕も治療をしようとしたところ、スーから待ったがかかった。
「シュンさん、治療は私達にお任せ下さい。シュンさんは、ドラゴンを襲った襲撃犯の確認をお願いします」
「うむ、それが良いだろう。案内しよう」
御令嬢の前で損傷が激しい遺体の確認をするのは、流石に僕も気が引けます。
僕は黄金色のドラゴンの後をついていきながら、ドラゴンの里の奥に進んでいきます。
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