散歩の五百二十九話 いざドラゴンの住む山脈へ出発です

 とはいえ、喜んでいてもついていけない人が。


「残念だが、この後仕事がありますので。またの機会にさせて頂きます」

「私も街の巡回の当番なので。待機か非番の際にします」

「俺も寄合いの会合があるのでな。まあ、ドラゴンをこうして間近で見れただけでも良い話になるぞ」


 代官と守備隊長と温泉街の責任者が、すごく残念そうに話していた。

 個人的には、おつきの人が行かなくて済んだとホッとしていたのが印象的だった。


「では、行くぞ。三つに分かれるのだ」


 ドラゴンが指示した通り、僕たちはご令嬢と共に三つのグループに分かれた。

 もちろん、僕たちは一つのグループに纏まっています。


 シャキーン!


 すると、僕たちを光の壁が丸く包み込んだ。

 一種のバリアみたいな感じだ。

 三体のドラゴンが、それぞれ一つの僕たちを包みこんでいる光の玉を手に取った。


「では、行くぞ」

「「「「わあ! えっ?」」」」


 黄金色のドラゴンが一声かけると、次の瞬間には空高く舞い上がっていた。

 一瞬の事で、僕も他のものも良く分からなかったぞ。

 そして、ドラゴンは物凄いスピードで山脈に向けて飛び出した。


「「「「わー! すごーい、はやーい!」」」」


 眼下の景色が物凄い速さで流れるのを見て、シロ達は大興奮していた。

 確かに、この速度では強力な魔法障壁でも使わないと風圧を防げないだろう。


「お主は、この光の壁の事を良く理解している。お主らでない限り、この風圧はふせげないだろう」

「ははは、そうですよね。僕は、てっきりドラゴンの背中に乗るかと思いました」

「それだと、光の壁が上手く展開できない。落ちたら、我でも何もできないぞ」


 ドラゴンの背中に乗って、高高度から落下する。

 うん、助かる見込みは全く無いぞ。

 そんな危険な真似はしたくない。

 竜の背中に乗る飛竜使いみたいには、簡単に慣れないんだ。


「それに、お主等の魔法障壁でも風圧は耐えられるが、別の目的があって光の壁にしている」

「別の目的?」

「うむ。まあ、直ぐに分かるぞ」


 どうやらドラゴンは、別の目的があって光の壁で僕たちを包み込んでいる様だ。

 ここは深く詮索せずに、理由を明かしてくれるのを待とう。


「スーさん、景色がとても速く流れていきますね。とても綺麗です!」

「そうですわね、リアーナ。それに、空から王国を眺めるのも良い機会ですわね」


 そして、ご令嬢は思い思いに空中散歩を楽しんでいた。

 うん、僕なんかよりもよっぽど心臓が強そうだ。

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