散歩の五百二十八話 出迎えドラゴン

 翌朝、僕たちは別荘の湖側の庭に立っています。

 この場所からだと、ドラゴンが住んでいる山脈がよく見えます。

 因みに山脈に行くので、念の為に冬の服装も用意しています。

 何と、リアーナさん達みたいに一緒に治療に行く人だけでなく野次馬の貴族令嬢も全員冬服の用意をしていた。

 しかし、侍従も含めて総勢三十人を超えるから、流石に全員は無理だろう。

 そして、野次馬は他にもいました。


「いやあ、折角だからドラゴンをこの目で見てみたいな」

「そういえば、この湖にはドラゴンが水浴びをしたという伝説がありましたな」

「そういえばそうです。それを理由に、住民にも説明ができますね」


 昨日話をした温泉街の責任者、代官、守備隊長も、ワクワクしながら待っていました。

 何だか、子どもみたいな目をしているよ。


「あっ、見えた!」

「何かがお山からやってきたよ!」


 ここで、目の良いシロとフランが山脈から飛んできたものをとらえた。

 アオもシロ達と同じ反応をしているから、山脈からドラゴンがこちらに向かってやってくるのは間違いなさそうだ。

 段々と飛んでいるドラゴンがハッキリ見えてきてみんながワクワクし始めたのだが、僕とスーは飛んでくるドラゴンの違和感に気がついた。


「えーっと、ドラゴンが一体じゃない気がするけど……」

「ええ、その様ですね。三体に見えますわ」


 先頭を飛んでいるのは僕たちが出会った黄金色のドラゴンなのだが、そのドラゴンの後ろに白に輝く二体のドラゴンがくっついていた。

 僕は、予想外の事に完全にビックリしちゃいました。

 そして三体のドラゴンが湖の上を旋回すると、僕たちの目の前に着陸しました。

 うん、ドラゴンが大きいから尻尾が湖の中に入っているぞ。


「待たせたな。我の息子がお主等を見てみたいと言ってな、ついでについてきたのだよ」

「そ、そうですか……」


 黄金色のドラゴンが念話でこの場にいる人に語りかけていたけど、後ろにいるのは息子さんですか。

 僕はドラゴンが目の前に三体現れてビックリしているけど、温泉街の責任者、代官、守備隊長は凄いものをみたという表情をしていた。

 個人的には、キャーキャーとテンションマックスのご令嬢にビックリしています。

 うん、か弱いご令嬢はこの場にはいないみたいだ。


「えっと、何人か一緒について行きたいと言っていますが良いでしょうか?」

「治療の手が増える分には、我々としては全く問題ない。この場にいるものは全員悪意がないから、連れて行く分には問題ない」


 あの、もしかしてこの場にいる全員を連れて行くつもりですか?

 想定外の事に僕とスーは驚いていたけど、僕とスー以外の人は再び盛り上がっていた。

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