散歩の五百二十六話 明日朝の事を説明

 もうこの時点でお腹いっぱいの話ですが、ここからが本題になります。


「それで、そのドラゴンから僕たちに傷ついた仲間のドラゴンを治療してくれと依頼がありました。そのドラゴンが、明日朝この別荘の庭にやってきます。あっ、ドラゴンが温泉街を襲う事はありません」

「「「……」」」


 うん、またもや皆さん固まってしまった。

 そりゃ、温泉街にドラゴンがやってくるなんて聞いたら、驚くのも無理ないですよね。


「え、えっと。恐らく大騒ぎになる可能性があるので、皆さんに事前にお伝えしました。幸いにして貴族の別荘に来ている方は、この場に殆どいるみたいですね」

「「「……」」」


 や、やばい。

 未だに皆さん固まってらっしゃる。

 こ、これはどうすれば良いのだろうか。

 すると、この方が話し始めました。


「ははは! ドラゴンを見ることが出来るのか。こりゃ、中々の傑作だ。逆にドラゴンにあってみてーな」


 温泉街の責任者が、大笑いをしながら話しだした。

 この辺りは、男性と女性の差ってものもありそうです。

 次に動き出したのは、ちょっと意外な人物でした。


「あの、シュンさん。その、治療の手は足りていますか?」

「うーん、それが全く分からないんだよね。場合によっては、明日も治療を行う可能性があるよ」

「分かりましたわ。私も治療に参加します。傷ついているのを見過ごす事はできませんわ」


 リアーナさんが、治療役として手を上げた。

 リアーナさん曰く、少しだけど回復魔法が使えるそうです。

 すると、何人かの令嬢もおずおずと手を上げてきた。

 この人たちも、回復魔法や聖魔法が使えるという。


「にーちゃんよ。ドラゴンは畏怖の存在でもあるが、滅多に見られないから幸運の存在でもある。逆に、スーザン殿下がドラゴンと友誼を結んでいる方が、街の人にとってはビックリだ」

「その線で、街にもおふれを出して起きましょう。王家が絡むとなると、下手に騒ぐことも出来ません」

「王族のスーザン殿下だからこそ、出来ることにしましょう。ある意味凄い事ですよ」


 温泉街の責任者、代官、守備隊長も、対策について考えてくれた。

 そっか、王家を絡めれば、街の人も観光客も下手に騒げなくなる。

 これが、ただ単にドラゴンが来たとなれば大騒ぎは必死だろうな。


「私たちも、治療はできませんが明日朝見に来ます。やはりドラゴンがどういう者か、この目で見てみたいですわ」

「ええ、そうですわね。他の者への自慢話にもなりますわね」


 そして、お嬢様は意外と肝っ玉の持ち主だった。

 ドラゴンに会ってみたいと、この場にいる全員が言っていた。


「皆様、突然のお願いになり大変そう申し訳ありません。どうか、宜しくお願いします」

「ははは、任せておけ。スーザン殿下は、お願いじゃなくて命令でも良いんだぞ」


 最後にスーがペコリと頭を下げていた。

 でも、温泉街の責任者がああやって言っているけど、スーは余程のことがないと命令はできないだろうね。

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