散歩五百二十三話 森から帰ろう

 お茶が出来て、みんな一休みです。


「はあ、お茶が美味い。体に染み渡る」

「くすくす。シュンさん、おじいさんみたいですよ」

「「「「おじいちゃんだ!」」」」


 みんなして、よってたかって酷いです。

 僕だって、ずっと緊張していたんですから。

 でも、他の人もだいぶ緊張がほぐれたみたいだ。

 シロ達は、お菓子をバリボリと食べているな。


「さてさて、この後はギルドだけでなく代官や別荘の使用人にも、明日朝の事を伝えないとまずいだろう」

「そうですね。いきなり巨大なドラゴンが現れたら、街の人はとんでもないパニックになりますわ」


 とはいっても、情報を伝えても実物を見ると度肝を抜かれるだろう。

 現に、アヤとアイは驚愕の表情のまま固まってしまったからな。


「スー、陛下からは返信あった?」

「あっ、ありました。レッドスコーピオンがドラゴンに手を出したと聞いて、山脈の麓の領地などに警戒を出しています。ドラゴンの治療は任せたと書いてあります。ドラゴンを倒すよりも仲間にする方が、遥かに有益だと思っているのでしょう」


 レッドスコーピオンは、ドラゴンを敵に回してでも素材を得ようとした。

 僕たちは、ドラゴンと良好な関係を築いてドラゴンから貴重な素材を得た。

 どっちが有益なのかは、一目瞭然だろう。

 ドラゴンを治療しながら、どんな人物がドラゴンを傷つけたかを確認しないとならないな。


「まずは、森を抜けて冒険者ギルドに行こう。その後は、別荘に関係者を集めて一回で話を済ませた方がいいな」

「私もシュンさんの意見に賛成です。早めに伝えた方が良いですね」


 今後の方針が決まったので、全員がお茶を飲み終わったところで出発準備をします。

 すると、熱いじゃんけん大会を繰り広げている三人がいました。


「「「じゃんけんポン!」」」

「シロ、フラン達は何をしているんだ?」

「誰がシュンお兄ちゃんに肩車してもらうかを、じゃんけんで決めているみたいだよ」


 どうも、行きで僕がヴィヴィを肩車していたのをフランとホルンが羨ましく思ったみたいだ。

 別に馬に二人乗っても問題ないと思ってしまうのは、気のせいじゃないと思うけどなあ。


「やったー! フランが一番!」

「ホルンが二番だよ」

「うう、ヴィヴィ三番……」


 そして、じゃんけん大会の結果が出たみたいです。

 じゃんけんに勝って喜ぶフランとは反対に、ヴィヴィは負けてどんよりとしていました。

 まあ、これは勝負の世界だからしょうがない。


「ほら、出発するぞ。フランだけでなく、馬に乗るフランとホルンも準備してな」

「「「はーい」」」


 こうして、行きと同じく帰りもワイワイと進み始めました。

 因みに、帰り道は馬とシロが全部覚えていました。

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