散歩の五百二十二話 休憩しましょう

「アオ、とっても可愛い帽子だね」

「「「可愛いー!」」」


 アオは、みんなに帽子を褒められてちょっと得意げです。

 とはいえ、これもドラゴンの鱗からできているからとんでもない代物なんだろうな。


「では、人の子よ。明日朝、また来るぞ」


 そう言うと、ドラゴンはおもむろに大きな羽を広げた。

 うん、改めて見ると、羽もとんでもない大きさだぞ。


 バサッ、バサッ!


「うわっ、凄い風だ!」

「おお、もうあんなところにいるよ!」


 周囲に風を起こしながら大きく羽を羽ばたかせて、ドラゴンはあっという間に空高くのぼっていった。

 そして、あっという間に森から飛び去っていった。


「いやはや、何とも言えない体験だったな」

「ええ、まさかドラゴンと遭遇するとは。しかも、こんな素敵な贈り物まで頂いてしまって」


 僕はドラゴンが飛び去った空を見上げ、スーは首から下げているネックレスを不思議そうに触っていた。

 とんでもない体験だったけど、レッドスコーピオン絡みでもある。

 スーは、直ぐに通信用魔導具で陛下に連絡をした。


「あれ? アヤお姉ちゃんとアイお姉ちゃん、固まっている?」

「あっ、はい。流石に、目の前で起こった事を受け入れるのに少々時間がかかりました」

「逆に皆様はすんなりと受け入れておりましたので、一流の冒険者は凄いと思いました」


 シロの声掛けに、ようやく起動したアヤとアイは少しホッとした表情を浮かべていました。

 僅か十分程の光景だったけど、普通なら信じられないものだろう。


「ひとまず休憩しましょう。お茶を用意します」

「これから帰らないとなりませんので、今のうちに軽く昼食を取りましょう」

「「「「はーい」」」」


 少し落ち着きたいというのもあり、アヤとアイは手早くお茶の準備を始めていた。

 シロ達も、馬の食事とかを用意していた。

 これからの事を整理しないといけないので、軽食は僕も大賛成です。

 地面に生えてる草を風魔法で刈って、土魔法で少し地面を平らにしてから敷物を敷きます。

 紅茶に適切な温度があるので、ヤカンに水魔法で作った水をいれるところまでやったら、後はアヤとアイが魔導コンロでヤカンを温めます。

 馬の世話を終えたシロ達は、マジックバックからお菓子とかを取り出していました。


「屋敷とほぼ同じ事をできるなんて、やはり皆様は凄いです」

「私達は火魔法特化なので、こうして万能型のシュン様がいるととても助かります」


 アヤとアイが僕の事を褒めるけど、アオも万能型の魔法使いだ。

 魔法使いとしての実力は圧倒的に僕よりもアオだし、回復魔法もスーの方が上だよな。

 身体能力強化もシロには勝てないし、僕はどちらかといえば器用貧乏になるだろう。

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