散歩の五百二十一話 ドラゴンからの依頼

 僕とスーがレッドスコーピオンの名を聞いて思わず固まってしまったら、ドラゴンが不思議そうに話しかけてきた。


「どうした人の子よ。何かあったか?」

「そのサソリの入れ墨に聞き覚えがあるんです。レッドスコーピオンという、闇組織の可能性が高いかと」

「うむ、その話は貴重なものだ。死体はまだ残っているから、もう少し調べよう」


 ドラゴンは、僕の話を聞いて深く頷いていた。

 かなり知性が高いのもあって、スムーズに話が進んでいた。


「我は毒に侵されていたので、屍肉を仲間が食べないようにこの地に来た。この地のものには迷惑をかけるが、仲間を守る為だ」

「死期を悟ってこの地に来たと。そういう事ですか?」

「うむ、その通りだ。仲間の前で、無様な姿を見せる事は出来ない」


 それほどの覚悟を持って、ドラゴンはこの地に来たのか。

 僕たち四人と一匹の全力魔法でないと、ドラゴンを治せない程の瀕死の重傷だったもんな。

 すると、ドラゴンは僕たちにある依頼をしてきた。


「お主等に頼みがある。山脈に残っている仲間を癒してほしい。死ぬ様な怪我ではないが、早めに回復させた方が良いだろう」

「治療は良いのですが、どうやって山脈まで行けば良いですか? それに、流石に今日は魔力が限界です」

「それなら、明日お主等を迎えにいこう。我の背中に乗れば良い。なに、お主等の匂いを辿れば直ぐに分かるぞ」

「「「「おおー!」」」」


 ドラゴンの背中に乗れると聞いて、シロ達は大興奮だ。

 でも、中々大変な依頼を受けることになった。

 とはいえ、怪我をしているものを放置は出来ない。


「あの、明日のことを含めて、この国の国王であるお父様に伝えても良いですか? あと、この地の冒険者ギルドと代官にもですが」

「おお、構わんぞ。そなたは王女なのか。わざわざこの地まで来て、とても感心だ」


 関係者にはこの事を伝えないといけないけど、問題はどうやってこの事を伝えれば良いかだよなあ。

 すると、ドラゴンはとあるものを指さしていた。


「我とあった証拠に、そこにあるウロコや爪に羽の一部をやろう。お主等なら、有効活用するだろう」

「あ、ありがとうございます……」

「そうだ、良い物をやろう。しばし待て」


 随分と豪快な贈り物に、スーの顔が引きつっていた。

 しかし、更に僕たちはビックリする事になった。


 シューン、キラリーン!


「「「「わわわ!」」」」


 突然僕たちの首元が輝いて、シロ達がビックリした声を上げていた。

 よく見ると、馬やアヤ、アイの首元も輝いていた。

 そして光が止むと、黄金色の小さな欠片がついたネックレスが首元にあった。


「それは、我の鱗を使用したネックレスだ。我が一族の友好の証でもあり、ドラゴンの加護もあるぞ」

「た、大層な物を頂き、あ、ありがとうございます」


 スーがまたもや顔を引きつりながらドラゴンに答えていたけど、これはとんでもない物だと直ぐに分かった。

 魔力の塊でもあり、とても温かい力を感じる。

 魔法が更に上手く使える感じがするぞ。

 アオにも似たような物を渡していたけど、アオはスライムだから小さな魔法使いの帽子だ。

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