散歩の五百十話 温泉街に到着です

 馬車は、段々と大きな湖方面へと進んで行きます。

 そして、そこそこの大きさの街が眼前に見えてきました。


「あれ? 湯気が沢山見えているよ?」

「なんだろう?」

「初めてみたよ?」

「あれが温泉の湯気だよ! 温泉が湧いているんだよ!」


 馬車から、フラン、ホルン、ヴィヴィが不思議そうに街から立ち上る湯気を見ていた。

 シロが三人に説明していたけど、ちょっと理解が追いついていないみたいです。

 こういうのは、実際に見てもらった方が良さそうですね。

 という事で、温泉街に無事に到着です。


「わあ、沢山の人がいるよ!」

「色々な所に宿があるんだね」

「何だか、とっても楽しそうだよ!」


 街に入ると、フラン、ホルン、ヴィヴィは大興奮です。

 山も綺麗に紅葉しているし、湖には観光船も出ています。

 沢山の観光客が訪れるのも、良く分かります。

 そんな温泉街を進んで行くと、別荘地に着きました。

 そして、一際大きな別荘の庭の中に馬車が入っていきました。

 うん、門兵もいるし馬丁もいるぞ。

 玄関に着くと、直ぐに控えていた侍従が馬車の所にやってきました。

 こりゃ、一つの貴族の邸宅並みの人員だぞ。


「スーザン殿下、皆様、お待ちしておりました」

「「「「おおー!」」」」


 そして、執事服をビシッと着て茶髪をオールバックに決めた少し若めの執事が僕たちを出迎えてくれると、シロ達のテンションが更に上がりました。

 まずは別荘の中に入って、少し休む事にします。


「「「「わあ、とっても広いね!」」」」

「流石は王家の別荘だ。とても品のある作りだ」

「私も初めて来ましたが、とても良い別荘ですね」


 外観からある程度想像ついたけど、別荘の中はとても広かった。

 木がふんだんに使われていて、とても落ち着いた内装になっていた。

 そんな別荘の中を進んで行き、僕たちは応接室に向かいます。


「では、改めましてご挨拶させて頂きます。スーザン殿下、シュン様、皆様方、ようこそ王家別荘へ。執事のワンウェイと申します。旧ブローカー侯爵家の屋敷がスーザン殿下の屋敷に変更された際には、私はスーザン殿下の執事としてお仕えさせて頂きます」

「そうなんですね。では、本日より宜しくお願いします」


 アヤとアイに引き続いて、ワンウェイもスー付きの使用人になるのか。

 着々とスーの屋敷の使用人の陣容が決まっていくなあ。


「なお、この別荘にいる使用人は全てスーザン殿下の使用人になる予定でございます。研修を兼ねて、別荘で働いております」

「「「「おおー!」」」」


 訂正、既にほぼスーの使用人が決まっていた。

 屋敷がスーに譲渡されるのは年明けの予定なので、研修のタイミングとしては良さそうですね。


「では、このあと昼食にして、代官邸に向かいます。代官邸がどうなっているか、私の目で確認します」

「畏まりました。では、代官邸に連絡いたします。それまで、応接室にてごゆっくりとおくつろぎ下さいませ」


 ワンウェイが恭しく一礼をして、応接室から出ていった。

 探索をしても悪い感じはしなかったし、少なくとも別荘で働いている使用人に悪人はいなさそうだ。


「シロ、この別荘で悪い感じはしないよな?」

「うん、全然平気だよ! 悪い人はいないよ!」


 シロだけでなく、アオも問題ないと返答してきた。

 スーの存在があるから、気をつけないと。


「シュンさん、少なくともこの屋敷の使用人の選定にお義母様が絡んでおります。ですので、悪意のある者は選ばないかと」

「だよなあ。王妃様を出し抜く人なんて、全く想像つかないよ」


 僕は、ソファーに寄りかかりながらスーと話しました。

 まずは一安心ってところですね。


「このお菓子、とっても美味しいよ!」

「「「もぐもぐ」」」


 因みに、シロ達は目の前に出されたお菓子に夢中になっていました。

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