散歩の五百七話 スー付きの侍従
貴族街から馬車を出発させたので、直ぐに王城に到着しました。
馬車を停めると、直ぐに待っていた係の者に応接室に案内されました。
「いよいよ出発か。少し頼み事をしたが、今のところ温泉街で何かトラブルが起きているという話は聞かない。まあ、気楽に捉えてくれ」
「羽根を伸ばす時には、思いっきり伸ばすもの。年明け以降は忙しくなるゆえ、リラックスするのも今のうちじゃ」
陛下と王妃様が応接室で待ってくれていたけど、二人とも休むのも仕事のうちだと言ってくれた。
ずっと忙しかったのも確かなので、温泉に浸かってゆっくりしたいものだ。
「時間もないし、本題に入るか。入れ」
「「失礼します」」
と、ここで陛下が廊下に控えていたっぽい人に声をかけた。
応接室に入ってきたのは、メイド服を着た二人の侍従でした。
二人とも濃い赤髮で、一人がロングヘアでもう一人がショートヘアだった。
身長は二人とも高く、胸も大きい。
かなりハイスペックな侍従だ。
「紹介しよう、アヤ、アイ姉妹だ。侍従長の娘で、スー付きの侍従になる」
王家の侍従長の娘だけあって、二人の所作が物凄く丁寧だ。
かなりできる侍従だぞ。
「スーザン殿下、シュン様、アヤと申します。本日より宜しくお願いいたします」
「アイと申します。何卒、宜しくお願いいたします」
「「「「宜しくー!」」」」
アヤさんとアイさんが恭しく頭を下げると、シロ達が元気よく返事をしていた。
アオも二人を大歓迎しているし、もちろん僕とスーも大歓迎だ。
「二人は双子で、シュンの一つ上だ。侍従としてのスキルもさることながら、護身術も身に着けている。まあ、シュンの強さにはかなわないが護衛としても役立つぞ」
王城に勤めている侍従は、みんな何かしらの護身術を身に着けているそうです。
これなら、王家の人々も安心ですね。
細かい事は馬車の中で話をするという事にして、さっそく玄関に移動して馬車の所に移動します。
「お馬さん、アヤお姉ちゃんとアイお姉ちゃんだよ!」
「「ヒヒーン」」
さっそくシロが馬にアヤさんとアイさんを紹介していて、馬も分かったとシロに返事していました。
ついでだから、馬に大体の温泉街の場所を教えておこう。
しゅっ。
「薬草採取した時に通った街道をずっと進んで、大きな湖の方に行くと温泉街だって。まあ、道中看板も出ているらしいしお前らなら大丈夫か」
「「ブルル」」
僕が馬にワールドマップを表示して経路を教えたけど、特に問題ないか。
そんな僕たちにとってはいつも通りの光景だったけど、この人達にとっては衝撃的だったらしい。
「あ、あの、馬が人の言葉を理解しております……」
「し、しかも、文字まで分かるのですか?」
僕とシロの馬とのやり取りを見たアヤさんとアイさんが、信じられないものを見たって表情をしています。
まあ、この馬はとんでもない馬だもんなあ。
「うちの馬は特別なので、気にしないで下さいね。恐らく御者なしでも、温泉街に着きますよ」
「「は、はあ……」」
アヤさんとアイさんはまだ納得していたかったけど、直ぐに慣れるでしょう。
みんな馬車に乗ったけど、僕が御者をしようとしたらアヤさんに止められました。
最初は、アイさんに馬車の中に入って貰います。
「では、お父様、お義母様、行ってまいります」
「「「「いってきまーす!」」」」
「気をつけて行ってこい」
「道中気をつけるのじゃぞ」
陛下と王妃様に挨拶をして、いざ出発です。
馬車は、ゆっくりと進み始めました。
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