散歩の四百九十九話 今日のお昼は焼き魚です

 お昼前には炊き出しに使用する食材がなくなってしまい、炊き出しは無事に終了しました。


「いやあ、今回の炊き出しは良かったなあ」

「塩味だけのスープとかとは、全然比較にならなかったぞ」


 炊き出しに並んでいた人は、とても満足して帰って行きました。

 既に後片付けも終わっているのだが、ここで問題が発生しました。


「私、シュン様の料理が食べたかったわ」

「私もです。雷撃の料理人の料理がどんなものか、とても楽しみでしたわ」


 僕の料理が食べられなくて、この場にいるご令嬢がかなり落ち込んでいました。

 うん、これからどうすれば良いんだろうか?

 その答えは、王妃様が出してくれた。


「うむ、無事に炊き出しも終わったな。妾は王城に戻るが、そなたらはスーの屋敷に行ってシュンの昼食でも味わうがよかろう」

「「「はい!」」」


 王妃様、チラリどころか堂々と僕の方を見て話さないで下さいよ。

 ご令嬢達も元気に返事をしているし、スーも苦笑しているぞ。

 しょうがない、ここで拒否をすると暴動が起きかねないのでやるしかないだろう。

 という事で、ヴィクトリー男爵家に多くのご令嬢が集まる事になりました。

 と、ここで王妃様が一言。


「スーにシュンよ、三週間後に貧困街で無料治療を行う。そなたらも参加じゃ」

「「はっ、はい……」」


 そして、再来週の予定も決まってしまった。

 僕とスーには、王妃様への拒否権は無いだろう。

 貧困街だと、警備もしっかりとしないと。

 そう思いながら、僕たちは王妃様が乗った馬車を見送りました。

 さてさて、何を作れば良いのだろうか。

 折角だから、焼き魚のソテーをメインにしたものにしようと。


「シロ達は、焼き魚で良いか?」

「「「「オッケー!」」」」


 シロ達も大丈夫そうだし、スーも問題ないと頷いていた。

 僕はスーの屋敷に向かう間に、同じく調理担当のアオと料理のコースについて話していた。


「こ、これが魚料理……」

「お肉料理と、同じ様に調理されています」


 おつきの人も含めた魚のソテーを作ったんだけど、何故かめちゃくちゃ驚かれた。

 そして、魚を食べて更に驚いていた。

 どうも王都では海から遠くて魚は一般的ではなく、干物などが多いそうです。

 こういう調理は、王家や有力貴族しか食べられていないらしいです。

 湖で食べられる魚も、あまり一般的ではないという。


「す、スー様、旅の間はシュン様の料理を食べられていたのですか?」

「毎回ではないのですが、よく食べていました。特に西の辺境伯領から王都までは、強行軍だったのにとても快適な旅でしたわ」

「羨ましいですわ。乾パンや干し肉で道中過ごした事もありますわ」


 スーがご令嬢から旅の事を聞かれたけど、そういえば旅で困った事って、現地の貴族が馬鹿やったくらいなんだよなあ。

 たまに不味い食堂に当たった事はあったけど、殆ど不都合はなかった。

 こうして、王都での炊き出しは無事に終わったのだが、改めて自分達が道中恵まれていた事を痛感した。

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