散歩の四百九十七話 炊き出しの準備開始
色々とあったけど偉い人への挨拶も終わったので、僕たちは大教会を出て教会前のスペースに移動します。
既に大きな鍋や調理器具に沢山の食材がテーブルの上に並んでいました。
今いるのは、王妃様とリアーナさんに十人の令嬢とおつきの人達。
それに、教会のシスターが数人つきます。
警備担当として、近衛騎士と聖騎士がそれぞれ十人ずつ出ていますが、僕たちがいるとはいえ警備がこれで良いのかとちょっと不安になっています。
「王妃様、昨日闇組織のアジト制圧で大活躍したのを連れてきても良いですか?」
「ふむ、許可しよう。ちと過剰な戦力になるが、ないよりかは間違いなくよいじゃろう」
「ありがとうございます。じゃあ、アオ、連れてきてくれるか?」
王妃様の許可も得たので、アオはスススと馬車置き場に向かいました。
連れてくるのは、もちろんうちの馬二頭です。
賢くてこちらの言うことも理解できるし、何よりもとても強い。
うってつけの護衛だろう。
パカパカパカ。
「「ヒヒーン」」
「あっ、お馬さんも手伝ってくれるんだ」
「「ブルル」」
馬はシロの所に来て、さっそく調理器具を並べるのを手伝っていました。
上手く口を使って並べているなと思ったけど、あなた達のお仕事はここにいる高貴な人達の護衛だからね。
「「ブルル」」
「もちろん分かっているってよ」
馬がちょっと不満げにいなないているけど、多分大丈夫でしょう。
さて、僕もエプロンを着て炊き出しの準備をしないと。
「す、スーザン様、リアーナ様、う、馬が作業を手伝っていますが……」
「普通の馬、です、よね? えっ?」
「あの、うちの馬はとても賢いので気にしないで下さい」
「怖がらなくても大丈夫ですよ。それに、とっても強いんですわ」
一部のご令嬢がうちの馬を見てビックリしちゃったけど、こればっかりは慣れて貰わないといけないね。
さて、炊き出しは何を作れば良いのだろうか。
「シスターさん、今日の炊き出しのメニューは何ですか?」
「本日は野菜炒めとスープになります。芋がご飯代わりになります」
ふむふむ、野菜たっぷりのスープに肉も入った野菜炒めか。
芋以外にも豆もあるし、栄養はバッチリですね。
では、さっそく下ごしらえをやりましょう。
「アオは、野菜炒めの準備をしてくれ。僕は野菜スープの準備をするよ」
アオは、了解といわんばかりに触手を上げました。
そして、野菜炒めで使う野菜や肉をまな板の上に念力で持ってきます。
シュパパパパ!
「シロとフランは、アオが切った野菜をボールに移してくれ。肉は別だよ」
「「よーし、やるぞ!」」
「す、凄い。スライムが物凄い速さで材料を切っているよ」
「何だろう。常識が崩れて行きます」
シロとフランはいつも通りにアオの料理を手伝っていたけど、他の手伝ってくれているご令嬢はスライムのアオの料理に度肝を抜かれていた。
風魔法で、野菜とかを切りまくっているだけだよなあ。
トトトトトトトン、トトトトトトトン。
「野菜を入れたから、こっちの鍋は煮込み始めますよ。スー、アク取り宜しくね」
「はい、お任せ下さい。リアーナさんも手伝って下さいね」
「はっ、はい。それにしても、シュンさんの包丁さばきはとんでもなく速いですね」
「そうかな。今日は、他の人の邪魔にならない程度の速さにしているよ」
「こ、これで速さを抑えているとは……」
「我が家の料理人よりも、圧倒的に包丁さばきが速いですわ……」
今まで各地の屋台で嫌になるほど下ごしらえをしていたので、包丁さばきには少し自信があります。
周りのご令嬢があ然とした表情をしているけど、今日はこれでも抑えめですよ。
「うーん、肉の臭みを抑えた方が良いから、ワインでフランベしてから鍋に肉をいれるね」
「じゃあ、マジックバックからワインを出しますわ」
ボウッ!
「ふ、フライパンが火を吹いた……」
「炊き出しのはずなのに、高級料理の手順になっていきますわ……」
今日使う肉は臭みが強めのものだから、ある程度下処理をしないと。
でも、スーはマジックバックの中にどれだけのお酒を忍ばせているのだろうか。
料理よりも、そっちの方が気になったぞ。
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