散歩の四百九十六話 教皇猊下
僕たちが色々と話をしていると、かなりの上物の司祭服を着た男性が僕たちの所にやってきた。
王妃様も含めて全員がやってきた男性に姿勢を正したので、僕たちも慌てて姿勢を正します。
「これはこれは教皇猊下、わざわざおいで頂き大変恐縮でございます」
「ほほほ、こちらこそ王妃様に来て頂き感謝申し上げる」
豪華な司祭帽にこれまた豪華な司祭服を着た白髪の老人は、やはり教皇猊下だった。
王妃様が教皇猊下に挨拶したタイミングで、僕たちも挨拶をします。
令嬢はカーテシーで、僕も頭を下げます。
「教皇猊下、スーザンでございます。お久しぶりでございます」
「スーザン殿下、久しいのう。大きく綺麗になられた。二つ名を持つ程に活躍までしておられたみたいで、儂の耳にもよく噂が入っておりましたぞ」
「き、恐縮です」
スーの二つ名は「聖なる女帝」だから、本人は余り気に入ってはいないんだよなあ。
とはいえ、教皇猊下までスーの活躍が届いていたとなると、間違いなく僕たちの事も聞いていた事になるぞ。
そして案の定、教皇猊下は僕に話しかけてきた。
しかし、教皇猊下の表情はどこか悲しげだ。
「そなたが、【雷撃の料理人】ことシュンか。囚われていた子ども達を救い出してくれて、大変感謝している」
「教皇猊下、お言葉をかけて頂き大変光栄でございます。しかし、私も全てを救う事はできませんでした」
「うむ、ブローカー伯爵家で起きた惨劇は、儂の耳にも届いている。何とも悲しい事が起きた事か。しかしながら、儂らは祈りを捧げる事しかできぬ。現場で対応したシュン達の力には及ばぬよ」
教皇猊下は、ブローカー伯爵家が起こした大量殺人を深く嘆いていた。
もちろんシロとアオもブローカー伯爵家の事を思い出して、かなりしょんぼりしていた。
「シュンには大きな力がある。これからもその力を、国のために存分に使って欲しい。ただ、その大きな力に心が飲まれない事を祈るばかりだ」
「教皇猊下からのお言葉、肝に命じます」
「うむ。それでは、儂は用事があるのでこれで失礼する。民のための炊き出しを、どうか宜しく頼むぞ」
そして、教皇猊下は僕たちに一礼してからおつきの司祭に促されて別の所に向かっていった。
教皇猊下が大教会内のホールから姿を消した瞬間、全員の緊張が一気に崩れた。
「流石は教皇猊下だけあって、凄い迫力だったなあ」
「うん、凄いおじいちゃんだったね」
僕は話しかけてきたシロの頭を撫でていたけど、僕もだいぶ緊張したのか少し体に力が入っていた。
軽く肩や首を動かしていたら、スーとリアーナさんが少しビックリした表情で話しかけてきました。
「シュンさんは、やっぱり凄いですね。教皇猊下と普通に話をするなんて。私は未だに教皇猊下の迫力に圧されて、あまり喋る事が出来ないんですよ」
「私は、畏れ多くて喋る事自体が出来ません。他の方も、全く同じだと思いますよ」
あっ、他の令嬢もリアーナさんの言葉にウンウンと頷いていた。
え、えっと、僕も体に力が入るほど緊張していたんだよ。
「教皇猊下と話す際も、シュンは問題ない話し方をしてたのう。しかも教皇猊下に感謝されるばかりか忠告まで貰うとは、やはりシュンは面白いぞ」
「王妃様、私を珍獣を見るような目で見ないで下さいよ……」
流石は王妃様、マイペースに僕の事をニヤニヤとして見ていました。
僕としては、教皇猊下よりも王妃様の方がずっと緊張しますよ。
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