散歩の四百九十五話 大教会で待っていた人々
翌朝、僕たちはそこそこの服に着替えて教会に向かいます。
スーは、昨日とちょっと違ったドレスを着込んでいました。
準備も出来た所で、さっそく教会に向けて出発です。
パカパカパカ。
「スー、王都で炊き出しをする事は多いの?」
「月に数回ありますわ。大教会前で行うものと、貧民街で行うものに分けられます。大教会前でも貧民街でも、貧しい人が炊き出しに並びます」
スーに炊き出しの状況を聞いたけど、やはり大きな都市になるとスラム街が存在しているんだ。
スラム街は何かと問題になるから、政治担当も頭が痛い事だろうな。
そんな事を思っていたら、直ぐに大教会に到着です。
僕たちは大教会の馬車置き場に馬車を停めたのだが、馬車置き場にとっても豪華な馬車が複数停まっているのですが。
しかも、一台の一際豪華な馬車には見覚えがあるぞ。
「おお、今日は沢山の馬車が停まっているんだね」
シロ達も、不思議そうに豪華な馬車を見ていました。
僕は、同じく不思議そうな顔をしている人に事の真相を聞いてみました。
「スー、これだけの人が集まるって話は聞いていた? しかも、絶対にあの人もいるよね?」
「私、伯父様の情報以外何も知りません。でも、間違いなくあの人がいますわね」
スーも何も話を聞いていなかったみたいなので、ここは思い切って話を聞くことにしましょう。
という事で、僕たちは大教会の中に入って行きます。
「あっ、王妃様だ!」
「「「本当だ!」」」
「ふふ、待っていたぞ」
大教会の中に入ると、大勢の令嬢に囲まれている王妃様が僕たちをニヤリとして見ていました。
シロ達は走って王妃様の所に向かって言ったけど、僕とスーはちょっと面倒くさい事になったぞと頭が痛くなりました。
「あの、王妃様……」
「スーよ、ここは公式の場ではないぞ。もっと気楽に話せ」
「はい、お義母様……」
スーも、完全に王妃様にのまれてしまった。
はあ、仕方ない。
ここは、僕が話をするしかないよ。
「王妃様、もしかして炊き出しの件も含めて僕たちを騙していましたか?」
「おお、シュンよ。騙すとは人聞きの悪い事よ。元々炊き出しは予定されていた物じゃ。ただ、妾もシュンの料理を味わいたいだけじゃのう」
王妃様が扇子で口元を隠しながら喋っているけど、ふふふという感じは全く隠せていない。
と、ここでもう一人僕の知っているとっても綺麗なドレスを着た人が、おずおずと僕の前に出てきました。
「シュンさん、申し訳ありません。実は先日、ここにいる令嬢の皆さんとお茶会をした際にシュンさんの料理はとても美味しいと言ってしまいまして。薬草採取に森に行ってコース料理が出てきたら、とても羨ましいと言われました」
先日王都近郊の森で一緒に薬草採取をした公爵家令嬢のリアーナさんが、申し訳無さそうに白状しました。
それと共に、僕に期待の目を向けるご令嬢の方々。
うん、今日はとっても大変な一日になりそうです。
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