散歩の四百三十一話 ブローカー侯爵の屋敷をほぼ制圧です

 逃走した執事以外は戦闘不能になったので、兵がグルグルに拘束して運んで行きます。


「ブローカー侯爵は、重犯罪者牢に入れて厳重に監視するように」

「「「はっ」」」

「ふがふが」


 まだ体が痺れていてうまく喋る事ができないブローカー侯爵は、軍務大臣の命令で更に猿轡までされて運ばれました。

 そして、一気に捜査も行います。


「この執務室もそうだが、執事の部屋を重点的に調べろ。あの執事が、事件の黒幕で間違いないだろう」

「「「はっ」」」

「じゃあ、シロも宝探しを手伝うよ!」


 ガンドフ様の命令で、兵が各所に散らばります。

 あの執事と戦ったガンドフ様だからこそ、執事が黒幕だとみているのでしょう。

 それと、シロとアオよ。

 やる気満々なのは良いが、証拠品探しは宝探しじゃないぞ。


「すみません、スーの様子を見に行っても良いですか? 直ぐに戻ってきます」

「こちらはもう大丈夫だ。ゆっくりと話をするが良い」


 軍務大臣の許可を得たので、僕は庭に向かいます。

 各部屋のドアが空いていて、兵が捜索を続けていました。

 それこそ、屋敷の隅から隅まで徹底的に調べていますね。

 駐屯地での爆発事件といい、兵も鬱憤が溜まっているのでしょう。


「あっ、シュンさん」

「スー、お疲れ様」


 庭には、スーの他に十人程の若い侍従と一人の御婦人がいました。

 御婦人は担架に寝かされていて、スーが治療を行っています。

 というか、スーは全力で治療しているけど、あの御婦人は痩せ細っているし体調は大丈夫なのだろうか。


「スー、この御婦人の体調は大丈夫なの?」

「この方は、先代ブローカー侯爵の奥様です。ずっと寝込んでいてかなりの重症でしたが、あと数回治療すれば大丈夫です」


 ある程度の治療が効いていて、先代ブローカー侯爵の奥様は安らかな寝息をたてていた。

 この人は重要な参考人だし、安全な所にいた方が良いですね。


「できればこの方は王城の中で保護したいのだが、それは可能ですか?」

「はっ、王城内の医療施設を確保しております。直ぐに搬送します」

「宜しくお願いします。執務室にいる軍務大臣にも報告して下さい」

「はっ」


 直ぐに兵が動いてくれて、先代ブローカー侯爵の奥様は移送用の馬車に乗せられて行きました。

 これで一安心です。

 そして、ちょっと気になる事が。


「スー、何でこんなに侍従の数が少ないの?」

「彼女らは、ここ数ヶ月で屋敷に入ったばかりの者です。それ以外の全ての侍従や家の者は捕まりました。不正を担いでいたり、他の者へ暴力を振るったりしていました。新人侍従の給金を騙し取ったのもあります」


 うわあ、殆どの侍従が捕まるとは。

 この屋敷にはまともな人がいないのかよ。

 そういえば、途中でベテランみたいな侍従が虐待の疑いで捕まっていたよな。

 今庭にいる侍従はスーやシロと同じくらいの年に見えるし、きっとベテラン侍従に虐待されていたんだなあ。

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