散歩の四百三十二話 謎のメモ

 まともだった侍従も、事情を聞くために兵と話をする事になりました。

 因みに数名負傷していたので、スーが治療しています。


「馬とかも、軍が引き取る形になるよなあ」

「馬を世話をする人も全員捕まったので、恐らくそうなるかと」


 屋敷としてここまで酷い状態だとは思ってもなく、スーもちょっと困惑した表情を見せていました。

 うん、僕達にはどうしようもないね。

 当面は捜索が続くし、屋敷自体も軍が接収するでしょう。

 ここは気持ちを切り替えて、さっきの執務室にスーと向かいます。


「また、何か見つけたよ!」

「おお、凄いな。どんどんと見つけてくれ」

「ふふふ、シロにお任せだよ!」


 執務室に入ると、シロが絵画の裏や壺の中などから色々な物を見つけていた。

 テーブルの上には、シロが見つけたであろう押収品の数々が立ち上がっていた。

 書類やお金の入った袋に魔導具など、色々な物が置かれていた。

 ガンドフ様が上手くシロをおだてるので、シロも張り切っています。


「伯父様、どんな状況ですか?」

「おお、スーか。手分けして捜索をしている。アオは、軍務大臣とトーリーと共に一番怪しい執事の部屋を捜索しているぞ」


 戦闘時の状況からも、ガンドフ様は執事が怪しいと見ているのだろう。

 僕も軍務大臣もトーリー様も同じ意見だし、ブローカー侯爵よりも重要人物だろう。


「うーん、もうこの部屋には何も出てこないと思うよ」

「そうか、ご苦労さん。後は、兵に調べさせよう。我々も執事の部屋に向かおう」

「はーい」


 シロの勘もあるだろうけど、これ以上は兵の仕事を取っちゃうので、僕達は執事の部屋に向かいます。

 シロが見つけた押収品は、最優先で軍の施設に運ばれるそうです。


「うわあ、これまた凄いですね」

「本当ですね。何もないですね」


 執事の部屋に行くと、これまた別の意味でビックリです。

 備え付けのテーブルや家具などを除くと、本当に何にもありません。


「机の中やゴミ箱の中まで、全部処分してやがった。恐らく奴は、屋敷が軍によって接収されると踏んでいたのだろうな」

「それで、見つかったのがこの紙だけなんですね」

「ああ、そうだ。それ以外はどんなに探しても見つからなかった」


 軍務大臣も、頭をかきながらやられたって表情をしていた。

 アオが本気で探しても、本当に何もなかったんだ。

 机の上にあったのは、一枚のメモだった。

 そこには、とある貴族の名前が書いてあった。


「ブローカー伯爵家、ブローカー侯爵の親類で王都近郊に領地を構えている。コイツも、貴族主義勢力だ」

「思いっきり不審な貴族じゃないですか。このメモが僕達を誘っているかもしれませんが、調査は必要です」

「そうだな、ブローカー侯爵が大事件を起こしたので親類も調査対象にできる。早速偵察を送って、内情を詳しく調べるとしよう」


 軍務大臣も、直ぐに部下へ指示を出していた。

 敢えてメモを残していた可能性が高いけど、何もしないよりかはやった方が良いだろうな。


「うーん、多分もう何もないよ」

「そっか、分かった。では、王城に戻って陛下に報告しよう」


 シロの勘でも何も出ないというので、僕達は王城に戻る事になった。

 取り敢えず執事の事は置いといて、最小限の被害でブローカー侯爵を捕縛する事が出来たと思わないと。

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