散歩の四百二十七話 ブローカー侯爵の屋敷に突撃
役人からの知らせを聞いた会議室にいる全員が、一斉に立ち上がった。
「取り急ぎ、軍務大臣と騎士団長にトーリー師団長を先陣とする。他の者も連携し、市民に被害が及ばない様に速やかに対応するのだ」
「「「はっ!」」」
陛下の号令に応えて、僕達は一気に動き出しました。
既にいつでも兵は動けるそうなので、僕達も王城に停めてあった軍の馬車に乗り込みます。
ガラガラガラ。
「ガンドフ様、すみません。会議の時に、偉そうに意見を言ってしまいました。特に貴族の教育に関しては余計でした」
「シュン、何も問題はないぞ。陛下も、会議の時は積極的に意見を言うようにしている。それに、的を得ているのだから、全く謝ることはない」
「ははは、流石はシュンだ。初めての会議で、全く物怖じせずに話すとは」
ガンドフ様だけでなく、トーリー様も逆に僕の事を褒めてくれました。
ホッと胸をなでおろしたけど、改めて気持ちを切り替えます。
「しかし、シュンと一緒なら楽な仕事になりそうだ」
「ほほう。トーリーよ、それ程シュンは強いのか」
「はい。魔法の使い手ですが、類稀なる指揮力が本当の凄さだとエミリア様も仰っておりました。スーもシロもアオも、エミリア様と特訓をしていたそうです」
「確かにそれは楽しみだ。エミリア様は、人を高評価する事は稀だからな」
トーリー様、軍務大臣にこれ以上の説明をすると僕への期待度が更に増しますよ。
それにエミリア様との特訓は、訓練じゃなくて死闘ですから。
少しでも気を抜けば、エミリア様に命を刈り取られちゃいますよ。
シロとアオは既にやる気満々だけど、スーはたははって苦笑していました。
ドーン!
「おっと、この音はもしかして例の爆発型魔導具を使ったのでは?」
「でも、実際に爆発は起きてませんね」
「シュン達が行った爆発型魔導具への対応方法は、軍の中で共有している。魔法兵をそこそこ配備したので、対応できたのだろう」
おお、流石はトーリー様だ。
昨日の今日で、既に爆発型魔導具の対応を共有しているとは。
実は、この爆発型魔導具が一番の懸念材料だったんだよね。
キキーッ。
「皆様、到着しました」
「よし、降りるぞ」
「おー!」
僕達を乗せた馬車は、争いが起きているブローカー侯爵の屋敷前に着きました。
軍務大臣の掛け声に、僕達は馬車から降りて行きます。
「状況はどうなっている!」
「はっ、屋敷の庭に魔法使いと魔導具使いが陣取っており、我々に向けて攻撃を仕掛けております」
うん、庭のど真ん中に二人の闇組織の構成員がいるな。
黒いローブを着た性別不明の者が魔法使いで、シーフっぽいのが魔導具使いだな。
「おやおや、やっと援軍が来たわよ。良かったですわね、出来損ないの皆様」
「ふん、ちびに最弱生物のスライムに貧乳か。湿気た相手だな」
「「むっ」」
おいおいおい、この口の悪さはどうにかならないかな?
二人と一匹に、言ってはならない言葉を思いっきり叫んだよ。
僕の横にいる人の殺気が一瞬で膨れ上がってるし、もう僕はどうなっても知らないよ。
シュン。
「「ふん!」」
バキッ、ドカ、キーン!
「ぐ、ぐはぁ……」
「そ、そこは、蹴るな……」
バタリ。
あーあ、だから禁句は言っちゃ駄目なんだよ。
シロのパンチにアオの体当たりが魔法使いに炸裂し、スーに至っては魔導具使いの股間に膝蹴りを突き刺していた。
勿論魔導具使いは、白目をむいて口から泡を吹きながら倒れていた。
「す、凄い、全く動きが見えなかった」
「あれが、ハンターの称号を持つ冒険の実力なのか……」
兵も思わず、怒れる二人と一匹の強さに驚いていた。
身体能力強化の魔法を使っているから、このくらいは楽勝でしょう。
「はは、スーも成長したなあ。そういえば、妹も胸が薄かったからなあ……」
そして、ガンドフ様が思わずポロリとこぼした言葉がとっても気になった。
スーの胸がないのは、残念ながら遺伝なのか……
「よし、屋敷に突入するぞ!」
「「「はっ」」」
軍務大臣の命令でどんどんと屋敷の庭に兵が入っていく中、僕は残念ながらこれ以上スーの胸は大きくならないのではと思ってしまったのだった。
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