散歩の四百二十六話 改革実行宣言

 さてさて、先ずブローカー侯爵への対応はこれで良いのだけど、何故か会議は続きます。


「次は、各組織と軍の再編計画だな。残念ながら、贈収賄による汚職がおきている。逆にこれを好機と捉えて、出来る限りの改革を行う」


 陛下の言う通り、ブローカー侯爵一派による贈収賄が確認された。

 他にも何かをしている者はいる可能性が高いし、対策を進めないとならない。


「不適切な事案の確認と、贈収賄が行われていないかをセットで行うように。また、官僚試験を厳格に行い、役職についている貴族にもある程度の試験を課す。一定水準に満たない貴族は、最悪役職取り上げを行う」


 恐らく、世襲で役職が貰える貴族もいるので、大した努力もせずに役職についている者もいるのだろう。

 そうなると、組織として動きがとても悪くなるぞ。

 でも、ちょっと疑問があるよ。


「陛下、質問宜しいでしょうか?」

「シュンか。良いぞ」

「現在貴族家は家庭教師が教育を行なっているかと思いますが、恐らくレベルがまちまちだと思います。最低限必要な事が記載されている、教科書などは御座いますか?」

「残念ながら、統一された教科書はない。そこまで教育が必要ないと感じている貴族も多いのだ。必要な統治は家臣に丸投げして、本人は書類にサインするだけの者もいる。各組織においても同じ事をしているものもいる。そうなると、不正を確認する事すらできない」


 やっぱりというか、スーに絡んでいた伯爵家の三男みたいな者が生まれるという訳だ。

 ろくでもない役職持ちの貴族がいると、やりたい事ができないもんな。


「反発も大きいと予想されるが、悪い慣習は改めないとならない。猶予期間は設けるが、利権にしがみつく者は排除しないとならない」


 前世でも、政治の利権関係ってかなり面倒くさいって感じだったな。

 この世界でも、利権関係はとても面倒くさそうだ。


「軍も、設備の最新鋭化を進める。シュンの様に稀に現れる強者が全てを覆す事もあるが、それを期待する訳にもいかない。兵士の全体的な能力の向上に加え、軍の設備の向上を進めていかないとならない。軍のアカデミーを設立し、戦術の研究や設備の研究を行う」


 比較されるのが僕ってのはあり得ないけど、陛下の考えとしてはかなり良いものだと思う。

 訓練だけでなく装備の充実は、兵の士気向上にも役に立つ。

 闇組織や人神教と戦う上で、絶対に欠かせない事だろう。


「とても困難で厳しいミッションだが、各組織が一致団結し進めて貰いたい。国の為、人の為に働く事を忘れない様に」

「畏まりました」


 陛下は、かなり近代的な改革を進めたいのだろうな。

 後は、どれだけリーダーシップが発揮されるかだな。

 その為にも、この後のブローカー侯爵の捕縛は絶対条件だろう。

 でも、事態は待ってくれなかった。


「会議中失礼します。報告します。ブローカー侯爵の屋敷で、大規模な戦闘が始まりました」

「ちっ、待ってはくれぬか」


 会議室に入ってきた役人による報告を、陛下は顔を歪めながら聞いていました。

 どうも、事態は一気に動き出しそうです。

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