散歩の四百十四話 スーが各地を回った理由

「スーの本当の存在を知っている人は、陛下と王妃様以外におりますか?」

「勿論じゃ。閣僚に辺境伯、後は一部の有力者がスーの事を知っておる。スーと仲が良い二人の令嬢も、スーの本当の存在を知っておるぞ」


 えっと、逆に今まで僕達が出会った人達ばっかりな気がするんですけど。

 エミリア様とは血の繋がった姉妹だし、王城に来ているのだから辺境伯家の娘のフィーナさんとも友達になる訳だよ。

 逆に、ケーシーさんとテルマさんはずっとスーの正体を黙っていたんだな。

 それ程、三人は深い友情で結ばれていたんだ。


「そして、スーが各辺境伯領を回っていたのも、大きな理由がある」

「前にスーが言っていた目的地ってものですね」

「うむ、そうじゃ」


 南の辺境伯領でスーから話を聞いた時に、何で各地の辺境伯領を回る必要があるのかと思っていたんだよな。


「スーが各地の辺境伯領を回ったのは、古臭い法律のせいなんじゃよ」

「法律、ですか?」

「うむ、庶子として生まれた王の血を引くものが正式に王族として認められる為なのじゃ」


 うん?

 ちょっと分からない。

 何で庶子の王族が認められる為に、各地の辺境伯領を回る必要があるんだ?


「その昔、子作りが大好きな王がいてのう。結果、庶子が沢山のいたのじゃ」

「また、とんでもない国王がいたんですね……」

「うむ、まさに王国の恥じゃ。そして、簡単に庶子を認めると、王位継承などにも影響が出てくる。そこで、各地の辺境伯領に認められて初めて王族として認定するという法律が出来たのじゃ。まあ、簡単に各辺境伯には認められないし、辺境伯領を回るだけでも大仕事じゃ」


 うん、つまりはスーがちゃんとした存在として貴族社会で認められる為に、各地の辺境伯領を回ったのか。

 そりゃ、大変な旅だったもんなあ。


「古臭い法律なので、廃止にしたらどうじゃと提言したのじゃが、内務大臣のハゲタヌキが強硬に反対してのぅ。泣く泣くスーを南の辺境伯領に送り出したのじゃ」

「もしかして、南の辺境伯領でスーの同行者が伯爵家の三男とかにすり替わったのも……」

「そうじゃ、あのハゲタヌキのせいじゃ。奴は自分の勢力が削られるのを嫌って、事ある事に妾達やスーの邪魔をしてきたのじゃ!」


 元は、スーの男爵家は貴族主義勢力の配下にあった。

 それが王族として認められれば、スーと親しい勢力は王族に近い勢力になる。

 確かに、貴族主義の勢力としては何としても阻止したいと思うだろうな。


「因みに、その内務大臣はどうしていますか? こうして、スーは各地の辺境伯領を無事に回り終えましたよ?」

「あやつは人神教や闇組織との繋がりが認められて、大臣職の解任に屋敷での謹慎となっておる。証拠も揃っておるので、明日にも強制捜査じゃ。ふふふ、チリ一つまで残らず徹底的に調べてやるのじゃ」


 うん、王妃様の笑顔がドス黒いよ。

 シロ達が、王妃様を見てガクガクブルブルしているぞ。

 自業自得だと思うけど、キッチリと罰を受けて貰わないとならないね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る