散歩の四百八話 やらないといけない事も沢山あります

 王都に近づくにつれて、畑や森が多かった景色から段々と住宅が増えてきました。

 それに伴い、街道を行き来する人も増えてきています。


「でも、結構早いね!」

「どんどんと行くね!」

「とっても早いね」


 今日はアオが御者をしていて、シロ達も御者席に座っています。

 今日は既に勉強も終えているので、シロ達のテンションも少し高そうです。


「早ければ、明日にも王都郊外の軍の施設に着くはずです」

「まあ、このスピードで行けば間違いなく着きそうだね」


 僕とスーは、今日はこたつに入ってゆっくりとしています。

 そして、これからの予定を話し合っていました。


「軍の施設で護送対象の人物を引き渡した後は、私の実家の屋敷に行きます。その後、エミリア様から書簡を預かっておりますので、王城に向かいます」

「えーっと、まさかと思うけど手紙の送り先ってのは……」

「エミリア様の父上である、国王陛下です」


 はは、王都に着いていきなり国王陛下に会うんですか。

 でも、預かり物もあるし、こればっかりはどうしようもないもんなあ。


「できれば、テルマさんとケーシーさんの屋敷にも行きたいと思っています」

「まあ、今回の事件の件で色々と話をしないといけないもんなあ」


 一足先に王都に帰ったテルマさんとケーシーさんの件もあるから、家族に改めて事情を説明しないと。


「後は、新年に向けて各領地から貴族が集まりますので、年末はパーティとかで忙しいかと」

「そういえば、北の辺境伯領のフィーナさんが絶対に会いたいと言っていましたね」

「そういう意味では、東の辺境伯領の時にお世話になった教会関係者にも会う必要があります」


 知り合いに会うだけでも、結構忙しそうだ。

 温泉は一泊二日で行けるけど、それ以外は新年になって各貴族が領地に帰るまで王都に滞在する事になりそう。


「後は、兄の子がちょうど五歳になりますので、フランとホルンの遊び相手になりますわ」

「兄と言うと?」

「正確には、私の母の兄の孫になります。従甥なんですが、私より年上なので兄と呼んでいました」


 そっか、スーは父親が誰か分からなくて母親は既に亡くなっていたんだ。

 王都にいると、微妙な立場になるのかもしれない。

 でも、今のスーは最初にあった頃よりもずっと心が強くなったから、困難にも一人で立ち向かっていけるかもしれない。


「おにーちゃーん。そろそろ、きゅーけいーだってー!」

「分かったよ」

「くすくす」


 御者席から、シロが身を乗り出して僕に声をかけてきた。

 元気いっぱいなシロの姿に、スーも思わず笑っています。

 色々とやる事はあるけど、先ずは目の前の事を確実に片付けていかないと。

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