散歩の四百六話 続く襲撃
しかし、侯爵領を出ても行く先々で闇組織の連中と相対する事になってしまいました。
「うーん、これは下手な矢でも数打てば当たる作戦ですかね」
「シュンは上手いことを言うな。まあ、奴らの放つ矢が下手すぎて、数打っても当たらないがな」
昼食時にトーリー様と話をしたけど、街に行く度に嫌がらせかってくらいに黒尽くめの連中と遭遇します。
「西の辺境伯領から侯爵領までは複数のルートがありますが、侯爵領から王都までは一本道です。なので、侯爵領以降の街で待ち伏せしていたのかもしれません」
僕の横で焼き肉を食べるスーが、何故襲撃が急増したかを教えてくれた。
だとしても、襲撃者の腕が悪すぎて全く相手にならなかった。
「せめて、寝込みを襲うくらいの事は出来ないのかな。街で待ち伏せしても、殺気が漏れているから分かりやすいんですよね」
「確かに、軍の偵察部隊とかの方が遥かに気配を消すのが上手い。あれじゃ、簡単に見つけてくれと言っている様な物だ」
そこそこの腕は持っているけど、キチンとした襲撃の訓練を受けているかは微妙だ。
そして、その答えは、その日の夜に判明した。
ピーーー!
「うん? 何だ何だ?」
今日の野営地で馬車の中で寝ていたら、突然笛の音が響き渡った。
僕は眠い目をこすりながら、同じく起きてきたスーとアオと一緒に馬車から出ました。
「何があったのか?」
「またもや黒尽くめの連中が襲ってきました。全員で五人でしたが、全員を捕縛しております」
おお、既に襲撃者全員を捕縛したのか。
流石は国軍の兵だけあるな。
念の為に探索魔法を使っても、辺りに潜んでいる者はいない。
ちょんちょん。
「うん? アオ、どうした……あっ!」
「シュンさんも分かりました? まさかあの人とは……」
焚き火の近くで拘束されていた襲撃者を見て、僕とスーはとってもビックリしました。
「シュン、知っている奴か?」
「はい、南の辺境伯領で僕達に絡んできたナルシストっぽい冒険者です。確か刃物を使った事件を起こして、冒険者ライセンスを停止されたはずです」
トーリー様にも聞かれたけど、南の辺境伯領で僕達のパーティに無理やり入ろうとした、ナルシストでキザっぽい人物が拘束されていた。
でも、これで襲撃者を絞り込める気がしてきたぞ。
「闇組織や人神教は、問題のある冒険者をスカウトしていたのかもしれません。実際に、北の辺境伯領で闇組織が大会に参加した冒険者に声をかけていましたし」
「犯罪を犯した素行不慮な冒険者なら、荒事にも誘いやすいと。冒険者ギルドに照会をかけた方が良さそうだな」
犯罪組織が犯罪者をスカウトするのは、全然ありえる。
しかも、下っ端の仕事なら使い捨てでも問題無い。
そういう意味では、闇組織が組織化してきているのかもしれない。
僕達にとっては、嫌がらせにしかなっていないけど。
「トーリー様、こいつ等はどうしますか?」
「護送用の馬車にまだ余裕があるから、そこに乗せるぞ。誰からスカウトされたのか、キッチリ吐かせる必要がある」
取り敢えず対応は終わったので、僕達は再び馬車に戻って寝袋の中に入りました。
思ったよりも面倒くさい事になっているなと、ついため息をついてしまいました。
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