散歩の四百二話 謎の視線

 スーやトーリー様の言う通り、あの子爵領を抜けてから二、三日はトラブルっぽい物は何もなかった。

 オオカミの群れに遭遇する程度で、今までの道中と代わりありません。

 普段なら観光を兼ねて色々な街に宿泊するのだが、今回は護衛任務も兼ねているので最低限の物資を買うのみで全く観光はしていない。


「「「すー、すー」」」


 なのだが、シロ達は暇をもて余す事もなくすっかりこたつにはまっているので全く問題なかった。

 というか、ぐーたらな感じになっているぞ。

 勉強はしっかりとしているし馬の世話もしているから、全くやる気がないわけではない。

 実は、この辺りの街は同じ様な風景ばかりで観光資源も特になく、全く興味をそそられないらしい。


「こたつとみかんがあれば、全く問題ないよ!」

「畑と森ばっかり何だもんね」

「川も流れていないよ」


 そういえば、南の辺境伯領から王都へ川が流れていたけど、この辺りは井戸水が多いから川っぽいものもないんだよね。

 王都に行けば、何か観光資源はあるかな?

 そんな事を思いながら、僕達は王都までの道程で最大の都市に到着しました。


「「「おおー」」」

「流石に辺境伯領よりは小さいけど、それでも大きな街ですね」

「王都の防衛を兼ねる侯爵領ですから。様々な街道が交わる交通の要所です」


 街を守る大きな防壁に、シロ達もビックリしていました。

 防壁の門の向こうからも、沢山の人の声が聞こえてきます。

 かなり賑わっている街だと、一目で分かります。


「ここの領主には挨拶をしないとならん。とても良い人だから、子爵の様な事はないはずだ。シュン、スー、ついてきてくれ」

「「はい」」

「では、ご案内いたします」


 ここの兵は子爵領の兵と違って、僕達の護衛を兼ねつつ屋敷に案内してくれます。

 領主が違うと、ここまで人の動きも変わるんだ。


「シロ、フラン、ホルン、お留守番宜しくね」

「「「任せて」」」


 シロ達に加えてアオもいるし、何かあっても大丈夫でしょう。

 シロ達や軍の所にも、侯爵領の兵がいるしね。

 僕達は、屋敷を目指して歩き始めました。


 ザッ、ザッ、ザッ。


「トーリー様、スー、物陰から僕達を監視している人がいますね」

「ああ、こりゃ悪意のある奴の視線だな」

「何をするつもりなのでしょうか?」


 街中を歩いていると、建物の陰から僕達を監視する視線が注がれています。

 それも、一人や二人ではありません。

 トーリー様とスーも僕達を監視する視線に気がついていて、いつでも動ける様にしています。

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