散歩の四百三話 無言の襲撃者
ザッ、ザッ。
遂に侯爵様の屋敷の前に着いたのだが、未だに物陰から僕達を監視する視線が。
僕は、トーリー様とスーとアイコンタクトを取った。
頷いてくれたので、ここで一気に一網打尽にしよう。
「そこにいるのは分かっている。出てこい!」
「「「総員、戦闘態勢を」」」
ぴー、ぴー。
トーリー様の強い声が辺りに響き、軍の兵も侯爵領の兵も戦闘態勢を取った。
更に、異常事態を知らせる笛を、屋敷の警備兵が何回も吹いていた。
ザッ。
そして、物陰から一人の黒尽くめの服を着た人物が現れた。
ここからでは、男性か女性かすら分からない。
ただ、ハッキリと言える事がある。
「お前、闇組織の人間だな。西の辺境伯領で捕まえた奴の服と全く同じだ」
トーリー様の指摘に、前に出てきた者から表情は伺えない。
だが、偶然にしては余りにも出来すぎだ。
ブォン、ガキン!
そして、無言のまま戦闘が始まった。
物陰から多数の黒尽くめの服を着た者が飛び出してきて、遠慮なくナイフを突きつけてきた。
「ふう、中々やるな。だが、まだまだだな」
「……!」
トーリー様は、ツッコんできた者の剣を軽々と受け止めていた。
そして、相手の剣を受け流し、強烈なボディブローを食らわせた。
うん?
相手は悶絶した様な雰囲気はあったけど、声が出ていないぞ。
バリバリバリ!
「……!」
やっぱりおかしい。
電撃を放っても、悲鳴すらあげない。
声を出さない様に、黙っている訳じゃなさそうだ。
捕まっていく他の者も、全く声を出さないでいた。
バシッ、シュイーン。
「……うぐ? あっ」
「やっぱり。あなた達は、何かの手段を使って無理やり声が出せない様にしていましたわね」
ここで、スーがバインドで襲撃者の一人を捕縛し、そのまま回復魔法をかけた。
襲撃者が声を漏らしたので、間違いなく何かの手を使っていたんだ。
「先ずは捕縛を優先しろ。どの道回復魔法を使うから、少しくらいの怪我は許可する」
「「「はっ」」」
対応が分かれは問題ないとトーリー様が判断したので、兵が一気に強引に襲撃者を捕らえ始めた。
一人だけ相変わらずこちらの様子を伺っている者がいるが、侯爵領の兵も気がついていてあえて何もしていない。
「よし、全て捕まえたな。この後の処理は任せても良いか?」
「はっ、お任せ下さい」
そして、襲撃者は一人を除いて全て捕まえた。
早速、侯爵領の兵が捕縛を終えた者から連行し始めた。
だっ。
残りの一人がこっそりと逃げ出していたが、侯爵領の兵が尾行を始めた。
探索魔法を使っても、もう周囲に敵意はない。
「ふう、そこそこの強さでしたわ。どう考えても、私達を殺すつもりでしたわね」
「闇討ち専門で、本来は一対一は苦手なのだろう。捕まった時の事も考慮して、声まで出せない様にしていたんだから」
スーも武器をしまって胸を撫で下ろしていたけど、細かいことは尋問した結果を聞くしかない。
周囲の警戒も厳重になった中、僕達は侯爵家の屋敷に入っていった。
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