散歩の三百八十七話 ケーシーさんとテルマさんの王都への出発準備

 ケーシーさんとテルマさんが王都に出発するのを翌日に控えて色々と準備をしているので、今日も僕達だけで教会にいます。


「これも運ぶよ」

「行くよー!」

「おう、頼んだぞ」


 地盤改良の為の土砂を、シロとフランが一輪車に乗っけて運んでいきます。

 実際の工事は職人がやっているので、僕達はあくまでもお手伝いです。

 今は元の孤児院が建っていた土地が少し陥没しているので、土砂を入れたりして直すそうです。


「うーん、やる事があまりないですね」

「暫くは地道な作業だ。それに人手が余っているからな」


 僕の呟きを聞いた棟梁が思わず苦笑していたけど、今日は本当にやる事がありません。

 炊き出しも近くに住む主婦や孤児院出身の人が駆けつけてくれているし、怪我をする様な工事もありません。

 治療は僕とホルンに任せて、スーとアオはケーシーさんとテルマさんの出発の準備に付き合っています。

 トリアさんは、今日は孤児院の子ども達の相手をしています。

 正直な所、僕達も買い物に行った方が正解だったかもしれないぞ。


「嬢ちゃん達は買い物に行っても良いが、あんちゃんは残っていた方が良いな。何せ、現場監督なんだからな」

「いやいや、本当の現場監督は辺境伯様ですよ」

「発注主は辺境伯家と教会だが、ああ見えて辺境伯様は忙しいからな。何でも出来るあんちゃんが適任だ」


 いやいや、僕だってあと一週間で辺境伯領を出発するんですけど。

 思い出すと、最初は僕達が教会の修理をする予定だったもんなあ。

 こうして、特に何もトラブルが起きる事なくその日は終了し、屋敷に戻ります。


「ケーシーさん、テルマさん、必要な物は買えましたか? スーが一緒だと、お菓子を大量に買い込みそうですが」

「「あはは、だ、大丈夫ですよ」」


 夕食時に買い物の様子をケーシーさんとテルマさんに聞いたが、スーはさっと目をそらしたしこれは大量にお菓子を買い込んだな。

 後で僕かアオのアイテムボックスに、大量に買ったお菓子を没収しよう。

 というか、まだまだ沢山のお菓子がアイテムボックスの中に入っているはずだよなあ。


「明日は、朝イチで出発ですよね?」

「はい。出来るだけ早く王都に到着する様にします」

「野営が多いかと思いますが、馬車内で就寝できますので」


 ケーシーさんとテルマさんの母親はそれぞれの家の馬車に乗ってきたので、テントを張る必要はないそうです。

 確かに、テントよりも馬車の方が安全ですね。


「シュンさんとスーには、色々とお世話になりました」

「こうして無事に王都に帰ることが出来るのも、シュンさんとスーのお陰です」


 改めて、ケーシーさんとテルマさんからお礼を言われたけど、冒険者ギルドで僕達とケーシーさんとテルマさんが出会わなければ、もっと大変な事になっていただろう。

 そう思うと、あのタイミングで二人に出会えたのは運が良かったのかもしれないね。

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