散歩の三百八十二話 王都への出発予定

 翌日、ケーシーさんとテルマさんは母親と一緒に軍の施設に向かいました。

 拘束されている兄と面会する為です。

 更に、何故か僕も辺境伯様達と話をする事になりました。


「行ってきます」

「「「いってきまーす!」」」


 なので、現場にはスーとシロ達で向かいます。

 僕は出かける四人と一匹を見送ってから、応接室に入りました。


「お待たせしました」

「いやいや、シュンも忙しい所悪いな」


 応接室には、辺境伯様とエミリア様に先代様にケントちゃん、更にはマリアさんとトリアさんがいました。

 辺境伯家勢揃いですね。

 そして、辺境伯様が最初に話し始めました。


「先ずは、これからの事だ。軍の第一陣が、五日後に辺境伯領を出る。ケーシーとテルマと母親も、そのメンバーと同行する。この第一陣は、二人の兄もついて行く。第二陣はその五日後に、幹部とあの女を連れて行く事になる。シュン達には、第二陣と共に辺境伯領を出発して貰いたい」

「僕達で、第二陣の護衛も兼ねるという事ですね」

「一つの目的はそうだ」


 僕達なら腕も立つし、万が一襲撃があっても撃退できる。

 でも、それ以外に何の目的が他にあるんだろうか?


「もう一つは、この国の偉い人がシュンに会いたがっている。本来なら軍など関係なく王都に向かって貰いたいのだが、万が一の事を考慮した」


 あの、えっと……

 辺境伯様をして偉い人って言う方って、殆ど限られていると思うのですが……


「勿論、相手は陛下だ。あと、閣僚も全員がシュンに会ってみたいと言っていたぞ。各辺境伯領の大事件を解決したんだ、当然といえば当然だろう」


 何となく予想はしていたけど、いわゆるこの国の中枢の人が僕に会いたがっている訳ですね。


「そんなに緊張しなくても良いわよ。スーを無事に実家まで送り届けて、ついでに私のお父様に会えば良いのだから」

「いやいや、全然ついでじゃないですよ……」


 エミリア様、貴方のお父様である陛下と会うのが一番胃が痛いですよ。

 とはいえ、避けられそうにもなさそうだし、諦めるしかないだろうな。


「お父様も、シュンの事は高く評価していたわ。各地の辺境伯領から凄い報告が言っているのだけど、お父様も早くシュンに会いたいと言っていたわ」


 今思えば、僕達は各地で大立ち回りをしていたよね……

 個人的には、ひたすら料理を作っていた記憶しかないけと。


「まあ、そういう事だ。陛下に会って勲章の三つや四つ貰って、名誉貴族にされておしまいだ」

「うーん、私は普通に子爵辺りを貰わないかなと思っているのよ」

「あの陛下の事だ、傍系の王族の娘をシュンに差し出す事はやるだろうな」


 あの辺境伯家の皆様、僕の目の前でそんな大層な話をしないで下さい。

 僕は立派な物は要らなくて、普通にご苦労って言って貰えれば十分ですよ。

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