散歩の三百七十八話 ケーシーさんとテルマさんのお母さん
ガチャ。
馬車のドアが開いて、馬車の中から見たことのない二人の中年女性が降りてきました。
でも、あの髪色はもしかして。
昼食の準備をしていた二人も、馬車から降りてきた人物に気がついたみたいです。
「ケーシー」
「テルマ!」
「お、お母様、何故辺境伯領に?」
「一体どうしたのですか?」
やはりというか、二人の中年女性はケーシーさんとテルマさんの母親でした。
突然の母親の出現に、ケーシーさんとテルマさんはお玉を持ったまま固まってしまいました。
「うむ、親子の感動の再会を期待したが、予想外の展開に固まってしまったか」
「それはそうですわ。王都にいるはずの母親が、いきなり目の前に現れたのですよ」
ばしっ。
「ぐふっ……」
あっ、馬車から辺境伯様とエミリア様が降りてきたけど、いきなり親子の対面をさせようとしたのは辺境伯様の考えか。
エミリア様からの容赦のない肘鉄が、辺境伯様の脇腹に命中したぞ。
「シュン、スー、トリア。この場は任せますわよ」
「あっ、はい任せて下さい。シロも配膳を手伝ってくれ」
「「「はーい」」」
元より配膳はどうにかしようと思っていたからエミリア様に言われるまでもないが、シロを呼んだら一足先に食べ終わったフランとホルンもこっちに来た。
まあ、盛り付けたうつわを配るだけだし、フランとホルンでも大丈夫か。
「お母様、わざわざ遠くから来て頂きありがとうございます」
「王都より関係者が来ると聞いていたのですが、まさかお母様だったとは」
「娘の一大事ですから、思わず体が動きましたわ」
「それに、事件の事も大体把握しております。二人には辛い思いをさせましたわね」
「「お母様……」」
うん、母親の懐の深さは偉大だな。
涙ぐむケーシーさんとテルマさんを、母親は優しく抱きしめていた。
お互いに積もる話もあるだろうからと、親子はエミリア様に促されて馬車の中に入って行った。
「王都からの追加の部隊が予定よりも少し早く着いたのでな、折角だから早めに顔を合わせようとなったのだよ。もぐもぐ」
「辺境伯様、大体の事は分かりましたのでつまみ食いはやめて下さい」
僕が自分用によそったスープを、辺境伯様がつまみ食いしながらここに来た理由を教えてくれた。
大まかな予想だと、他の貴族が絡むどころか犯罪組織も加わった大事件になったから、辺境伯領まで急いで来たのだろう。
「ともかくとして、これからの事を話さないとならないが、当面シュン達がやる事は変わらぬ。これは、西の辺境伯家とナスカ子爵家、フランツ子爵家の問題だからな。もぐもぐ」
「だから、辺境伯様はドヤ顔しないでつまみ食いしないで下さい……」
二杯目のスープを食べる辺境伯様に思わずガクリとしながらも、僕は三家の問題が良い方向に進めばと思った。
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