散歩の三百六十六話 実は孤児院の方がヤバかった
「実は、俺はあの教会の孤児院の出身なんですよ。当時から雨漏りとかしていて、ちょっと心配だったんですよ」
「教会は石造りなので床を張り替えれば良いのですが、俺も孤児院の方が心配です」
おお、若い大工はまさかの孤児院出身ですか。
しかも、教会よりも孤児院の方がヤバいという。
確かに教会内部は古かったけど、全然修復範囲だった。
ここは、実際に建築のプロに見て貰おう。
「教会内部は問題ないですね。流石に床は張り替えた方が良いです」
「木像も、全然修復できます。この木像は、修理して大切に扱った方が良いですね」
やはりというか、教会と木像は修復可能だという。
キチンと、プロに見てもらって良かった。
さてさて、ここからは問題の孤児院ですね。
「シロ、フラン、ホルン、孤児院に行ってくるぞ」
「「「いってらっしゃーい」」」
庭で草取りをしているシロ達に一言言ってから、僕達は教会裏手にある孤児院に行きました。
「こ、これは……」
「不味いですね。かなり状態が悪いです」
うん、専門家が見なくても僕でも分かります。
孤児院は、ヤバいぐらいボロボロです。
若い大工が柱を押したら、ギーギー言っているぞ。
「経年劣化で、基礎が駄目になっていますね」
「あと、木も腐っています。正直に言うと、倒壊の危険性が高いです」
わお、これは不味いぞ。
取り急ぎ、孤児院の中にいるスー達に声をかけよう。
「「「わー!」」」
孤児院の中では、子どもが追いかけっこをしています。
元気があるのはいい事ですね。
「シュンさん、どうしましたか?」
「この孤児院の事でね、シスター長はどうだった?」
「風邪をこじらせていました。少し体力が落ちていますね」
これは課題が山積みだぞ。
取り敢えず、シスター長に会おう。
コンコン。
「はい、どうぞ」
ノックしてから、僕達はシスター長の部屋に入りました。
ベッドには年配の女性が寝ていて、直ぐに若い大工が駆け寄って行きました。
「「シスター長、大丈夫ですか?」」
「おお、ひさしぶりじゃないか、大きくなったのう。元気だったかい」
高齢のシスター長は、自分の体調の事よりも久々に会った若い大工の事を気遣っていました。
この行為を見るだけでも、シスター長さんはとんでもない人格者だと分かるね。
でも、このままじゃ駄目だから関係者を集めて話し合わないと。
「トリアさん、悪いけどエミリアさんか先代様を呼んできてくれないか? 後は教会の関係者とさっきの木工所の棟梁もだな」
「畏まりました」
偉い方と話をして、方針を決めた方が良いな。
これは、思ったよりも大掛かりな仕事になるぞ。
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