散歩の三百六十一話 忙しい収穫祭の再開です

「ブーケトスも無事に終わりましたので、準備が整い次第パレードを開始します」


 えっと、壮絶なブーケトスだった気がするけど、これで無事に終わったんだ。

 司会もサラリと流していたし、ある意味西の辺境伯領ってすげーなと思ったよ。

 パレードの準備期間の間に、色々聞き出そうなトリアさんと一緒に先代様とマリアさんの所に向かいました。


「先代様、マリアさん、ご結婚おめでとうございます」

「おお、ありがとう。黙っていて悪かったな」

「シュン様にはいつも娘がお世話になっていて、本当にありがとうございます」


 先代様とマリアさんも僕とトリアさんが来るのは予想していたみたいで、直ぐに言葉を返してきました。

 そして先代様とマリアさんは、トリアさんの事をギュッと抱きしめました。


「トリア、今まで実の父親なのに色々と出来ずに悪かったな。これからは、私の事を父と読んでくれ」

「結婚式の事も妊娠している事も黙っていて、トリアには本当に悪かったわ。これからは、皆で暮らしていきましょうね」

「お父様、お母様……」


 三人は、涙ながらに抱き合っていました。

 立場の問題で色々あったけど、これからは一緒に暮らしていけますね。


「今回シュン様やスー様と一緒に行動させて頂き、まだまだ経験が足りないと自覚しました。これから、もっと頑張っていきたいです」

「シュンはちょっと特殊だから気にしなくて良いが、頼りない兄をこれからも支えてやってくれ」


 あの、先代様。

 その言い方だと、僕は変人だと言っているのと同じですよ。

 感動的な場面で、こっそりと言わないで下さい。


「馬車の準備が出来ましたので、皆様お乗り下さいませ」

「トリア、折角だから一緒に乗りなさい」

「そうね、家族だから良いでしょう」


 先代様とマリアさんが、トリアさんの手をひいてオープン型の馬車の方へ連れていきました。

 折角だから、親子で楽しんで欲しいね。


「シュンお兄ちゃん、シロも行ってくるね」

「「行ってくる!」」


 そして、何故かシロ達も馬車の方に走って行きました。

 ま、まあ結婚式の手伝いをしたご褒美だと思えば良いでしょうね。

 僕は舞台裏に行って、スー達の様子を見に行きます。


「スー、そっちはどうだ?」

「あっ、はい。どうぞ入って下さい。ケーシーとテルマは寝ていますが」


 念の為にスーに声をかけてから舞台裏に行くと、既に着替え終わったスーとそのままの姿で寝ているケーシーさんとテルマさんの姿がありました。

 スーは床に座って、寝ているケーシーさんとテルマさんを見つめていました。


「二人の具合はどう?」

「治療も効いているので大丈夫ですよ」


 二人が爆発型の魔導具に覆いかぶさった時は肝が冷えたけど、何とか無事で本当に良かった。


「事件も解決に向かっているし、二人も無茶な事をしないで済むね」

「そうですね。二人も家族の事で相当追い詰められていましたし、少し休ませてあげたいですね」


 スーの言う通り、二人は精神的にかなり疲労していたからゆっくりと休ませてあげないと。

 軍が到着したらまた忙しくなるし、今はゆっくりと寝かせてあげよう。

 と、ここで侍従が舞台裏に顔を出してきました。

 何かあったのかな?


「シュン様、追加の食材が届きました」


 げっ、まさかのタイミングで屋台再開ですか?

 しかも、今はシロ達に加えてトリアさんもいないよ。


「シュンさん、頑張って下さいね。私は二人を見ていますから」


 そして、スーもにっこりとしながら僕に話しかけてきました。

 うん、スーからも絶対的な意志を感じるぞ。

 僕は項垂れながら、侍従の後をついて行きました。

 皆幸せそうだから、ここは一つ頑張りますか。

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