散歩の三百五十七話 エミリア様無双
シャキン。
ヘラは腰に下げた鞘からレイピアを抜いて、エミリア様を目掛けて構えました。
一方のエミリア様は、腕をだらんと下げていて自然体のままです。
そしてエミリア様とヘラの周りは、僕達を除くと街の人も五メートルは離れています。
誰もが言葉を発せずに、固唾をのんでエミリア様とヘラの成り行きを見守っていました。
アオと視線をあわせて念の為に周囲に不審者がいないか確認すると、うん誰もいないね。
アジトはヘラの護衛から守備兵が聞き出しているはずだし、そこはお任せしよう。
ヒュン、ヒュン。
すっ、すっ、すっ。
「「「おお……」」」
突如としてヘラがレイピアを高速で突く所から、二人の戦いが始まりました。
大口を叩くだけあって、ヘラのレイピアさばきは中々のものだったけど、あの速度なら僕でも避ける事ができそうだ。
現に、エミリア様はレイピアを余裕でかわしています。
ドレスを着てヒールの靴なのに、エミリア様はかなり余裕って感じです。
街の人も、手に汗を握りながら事の成り行きを見守っていました。
「この、この、この、この!」
ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン。
エミリア様が余裕でレイピアをかわし続けているので、段々とヘラが焦ってきました。
既に五分は状況が膠着してます。
「ふっ」
ばし。
カランカラン。
ばん!
「あっ!」
そして、エミリア様がタイミングを見計らって、ヘラの手首を手刀で叩いてレイピアを叩き落としました。
エミリア様は叩き落としたレイピアを素早く僕の方へ蹴り飛ばし、僕もレイピアを直ぐに手に取りました。
エミリア様の早業に、ヘラは手刀を受けた手首をかばいながら悔しそうにしています。
「「「うおー! エミリア様!」」」
「「「凄いすごーい!」」」
エミリア様の華麗な動きに、街の人も一気に歓声を上げます。
シロ達も、思わずエミリア様に拍手を送っていました。
「くそ、今度はコイツだよ!」
ボッ、シュ!
街の人のエミリア様への声援も合わさってか、ヘラは益々不機嫌な表情に変わります。
そして、素早く一メートル位の火の玉を魔法で生み出して、エミリア様目掛けて投げつけました。
「ふっ」
バキ、ドーン!
「なっ?」
エミリア様は火の玉をアッパーカットで上空に殴り飛ばし、火の玉は上空で爆散しました。
エミリア様の行動にヘラは驚愕の表情を見せるけど、エミリア様のあの魔法の弾き方を知らないと誰もが驚くよね。
「「「流石はエミリア様だ!」」」
「「「カッコいい!」」」
街の人もシロ達も、エミリア様の活躍に物凄く盛り上がっています。
ヘラもかなりの能力の持ち主だけど、エミリア様の前では全く意味がなかったみたいですね。
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