散歩の三百五十一話 収穫祭二日目のスタートです
ゴミ拾い作戦も完了して、不審者二名も捕縛できました。
アオが急いで周囲を確認したけど、取り敢えずは不審な魔導具もないとの事です。
と言っても、今日のアオは遊撃隊として自由に動いて貰います。
「お待たせしました。それでは、収穫祭二日目を開始いたします」
「「「うおー!」」」
スタッフのアナウンスで、収穫祭二日目がスタートしました。
最初の二時間は、様々な出し物が出てくるそうです。
「お好み焼き二つとまんまる焼きを三つに、焼き肉をお願いします」
ははは、僕は目の前で行われている出し物を見る余裕がないほど忙しくて、今もひたすらお好み焼きを作りながらまんまる焼きも焼いています。
今は神に捧げる賛美歌みたいなのが歌われているみたいだけど、聞く余裕なんて全くありません。
スー達も合同結婚式の準備が忙しいので、舞台上で行われる演技を見る暇はなさそうです。
「うわー、凄いね」
「歌っているね」
フランとホルンは可愛らしい服に着替えていて、ステージの後ろから舞台で行われている歌劇を見ています。
まあ、二人はフラワーガールがメインの仕事だから、今はやる事はないでしょう。
シロは、スーと一緒に色々お手伝いをしているそうです。
「スゲーな、昨年よりもパワーアップしているぞ」
「こりゃ張り切っているな」
今度は別のグループが組体操っぽい事をしていて、観客は大盛り上がりです。
更には息のあった剣舞も始めて、この日の為に練習してきた事が良く分かります。
「おー、凄い凄い!」
「うーんと、こうかな?」
フランは剣舞を見て興奮していますが、ホルンはさらりと剣舞を真似ています。
一部の観客は、ホルンがあっさりと剣舞を真似た事にびっくりしています。
「シュン様、お好み焼き十個とまんまる焼き五個お願いします」
「な、なんだよ、この行列は」
僕は、未だに行列が絶えない屋台の中でひたすら調理を行っています。
満員御礼ってのは有り難いですが、流石にこの行列は予想外です。
そして予定よりもかなり早い段階で、まさかの事態になりました。
「シュン様、具材が全て無くなってしまいました」
「えー!」
合同結婚式が始まる前に、まさかの品切れで閉店です。
それだけ大量に売っていたことだし、こればっかりは仕方ありません。
僕はボードに売り切れの文字を書いて、店頭に置きました。
「まんまるやき、ください!」
列が途切れた所でまさかの閉店になっているとは全く知らないケントちゃんが、ニコニコ顔で屋台にやってきました。
一緒についてきたマリアさんは品切れの表示を見てあってなっているけど、背の低いケントちゃんはボードが見えないみたいです。
「ごめんね、ケントちゃん。辺境伯様が最後のまんまる焼きを買っちゃったんだ」
「ええー!」
うん、これは本当の事です。
ちゃっかりと列に並んでいた辺境伯様が、まんまる焼きを五個も買ったんだよね。
すると、ケントちゃんは猛ダッシュで辺境伯様の元に走って行きました。
おお、小さいのに中々早いなあ。
「おとーさまのばかー!」
「うお、何だ何だ?」
突然耳元で大声で叫ばれたので辺境伯様は驚いているけど、ケントちゃんの気持ちは良く分かるもんな。
今もケントちゃんは涙目になっているし、後で材料が届いたらケントちゃんにまんまる焼きを作ってあげないとね。
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