散歩の三百四十八話 ケントちゃんは将来は大物?

 僕がトリアさんと一緒に屋台の仕込みをしている間に、アオは広場とその周辺を忙しく動き回っています。

 酔っ払いの後始末をすると同時に、広場や周囲に不審物がないかを確認しています。

 酔っ払い対応もあってか広場の警備はかなり厳しい上に、昨日スーが人神教と闇組織の偵察員を捕まえたから、魔導具を仕掛ける状況ではないのは間違いない。

 しかし、念には念を入れて動く事にしたみたいです。


「今日は結婚式がメインイベントだから、つまめる物が売れそうだな」

「そうですね。私も見た事がありますが、多くの街の人が広場に集まっていました」


 トリアさんのいう通り、立ち見客が多く集まりそうだなあ。

 となると、タコヤキもどきのまんまる焼きが沢山売れそうです。

 お好み焼きもどきは半分の大きさにして、小さくして売れば良いかも。

 とにかく、その場のノリでどうにかするしかないなあ。


「最初は余興みたいものですので、踊りなどを行ってお昼前に合同結婚式を行います」

「となると、今舞台にいて立ち位置を確認しているのがその踊りなどをする人か。確かに、結婚式とブーケトスだけじゃ直ぐに終わっちゃうもんなあ」


 余興と言っても、大盛りあがりは間違いないだろうな。

 祭だから、街の人が盛り上がる分には何も問題ありません。

 スー達も結婚式の準備で大忙しなので、シロ達と一緒に頑張って貰いましょう。


 からからから。


「おっ、領主様の到着だ」


 辺境伯様が乗った馬車が広場にやってきて、街の人も声を上げました。

 馬車から降りてきた辺境伯家の皆様は、二日酔いの欠片も感じられない程に普通に歩いています。

 スーといい辺境伯家の人達といい、化け物級の肝臓を持っているなあ。

 すると、とととってケントちゃんがマリアさんと一緒に屋台にやってきました。


「まんまるやき、くださいな!」


 ニコニコとしながら、ケントちゃんがお金を持ってきました。

 まるで、小さな子の初めてのお買い物って感じですね。

 せっかくなので、ここはケントちゃんに付き合いましょう。


「ケントちゃん、一つで良いかな?」

「みっつ!」

「みっつ? ケントちゃんと、後は誰かな?」

「ケンちゃんは、おかーさまといっしょ! あとは、じーじとまりちゃ!」


 おお、ケントちゃんが良い笑顔でさり気なく辺境伯様の事を抜いたぞ。

 マリアさんが苦笑しながら頷いているから、これは本当の事なんだ。

 と、取り敢えず急いで三人分のまんまる焼きを作ろう。


「おお、若様中々やるなあ」

「小さいのに度胸があるぞ」

「こりゃ、辺境伯領も安泰だ」


 ケントちゃんが僕がまんまる焼きを作っているのを見ているけど、街の人がケントちゃんの事を見て感心していたよ。

 確かに堂々と父親である辺境伯様の分を注文しない辺り、幼いのに大物感はあるよね。

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