散歩の三百四十五話 今日は早めに休みます

 さてさて、屋敷に到着したけどどうやってスーを部屋に運ぼうか。

 未婚の貴族令嬢の部屋に、男が入る訳にはいかないよなあ。


 ひょい。


「スー様はお任せ下さいませ」


 そんな事を思っていたら、トリアさんがひょいと僕の背中からスーを持って行きました。

 しかもお姫様だっこで。

 そういえば、トリアさんは先代様の娘なんだよなあ。

 身体能力強化も使わずに、軽々とスーを持ち上げています。


「私達も部屋に戻ります」

「流石に今日は疲れました」


 ひたすら野菜を切っていたケーシーさんとテルマさんも、だいぶお疲れみたいです。

 シロ達と一緒に、部屋に入っていきました。

 さて、僕も部屋に戻ろうかと思ったら、そうはいきませんでした。


「シュンも疲れているところ、すまんな」

「いえ、僕は大丈夫です」


 打ち合わせをするために、僕は応接室に呼ばれました。


「あの、お酒を沢山飲まれていましたが、大丈夫ですか?」

「問題ない、全く平気だ」

「酒など、水みたいな物だからな」

「ふふふ、淑女の嗜みって訳よ」


 いやいや、辺境伯家の酒の強さは異常だと思いますよ。

 スーを除けば、あの広場で一番酒を飲んでいたはずです。

 そんなの気にしないと言わんばかりに、普通に会議が始まりました。


「スーと守備隊が捕まえたのは多くはスリなどを狙っていた奴らだったが、一部人神教の連中がいた」

「目的は偵察だな。やはり明日の結婚式で、何かをやろうとしていたみたいだ」

「街角で乾杯するのは、収穫祭では普通の事よ。だから、お酒を飲ませても誰も不思議には思わないわ」


 やっぱりというか、あの不審者は人神教の連中か。

 となると、まだ残りの連中がいるわけか。

 明日も気は抜けないね。


「結婚式を妨害する理由は分かっている。人神教の神以外に結婚を報告するのが許せないらしいな」

「元々人神教の存在をアピールする為に祭りのハイライトである結婚式を狙っているが、更に人神教をアピールするのも目的らしい」

「はっきり言って迷惑な連中よね。貴族主義の連中と組みして、何か良くない考えていそうね」


 目的の為には手段を選ばないところを見るに、人神教はテロ組織と言って問題ない。

 こうなれば、こちらも徹底的に反撃するまでだね。

 お酒を飲んでいるのもあって、これで話し合いは終わりです。

 皆も夕食は軽めにして、疲れているのもあってか早い内に寝る事になりました。

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