散歩の三百四十三話 収穫祭一日目の終了と酒を得た酔っ払い

 そして、収穫祭は更に凄い事になっていきます。


「こっちには、冷えたワインもありますわよ」

「神に捧げた神聖なワインだ。皆も飲むがよい」

「「「きたー!」」」


 今度はマリアさんと先代様が、街の人に冷えたワインを配り始めました。

 何だろう、このテンションの高さは。


「今年は爆発事件もあったので、無事に収穫祭を開けるか街の人も不安だったのでしょう」


 トリアさんの推論は、至極当然だった。

 広場に設置していた全ての物が、爆弾型の魔導具で壊れたもんな。

 それだけに、街の人のテンションの高さも納得です。

 騒いでいるのは獣人が多いけど、人族も沢山街に繰り出しています。

 というか、不審者っぽい人は……

 いた!

 エールの入ったコップを片手に、エールを飲まずに辺りをじろじろと見ているぞ。

 アオも不審者に気がついた様で、こっそりと動き始めました。

 と、そこに現れたのは酔っ払い獣人の集団。


「おっ、あんちゃん、エールの飲みのペースが遅いぞ!」

「ああ? 獣人風情が何を言って……」

「まあまあ、飲め飲め!」

「うがががが!」


 あーあ、怪しい人族の男は獣人に絡まれて無理やり飲まされているぞ。

 そして、ぶっ倒れた所をアオがこっそりと運んでいきました。

 おや?

 無理やり怪しい奴らに酒を飲ませた獣人の集団が、僕にニヤリとしてきました。

 もしかしなくても、あの人達は守備隊員なのかもしれないね。

 不審者を捕まえて話しかければ、さっきみたいに人神教独特な喋り方をしてくる。

 後は、飲ませてノックアウトさせれば良いわけだ。

 あの集団に、アオも加わったので確実に不審者を把握できます。

 何故かアオはスーも一緒に連れて行ったけど、見なかった事にしましょう。

 人族があの集団にいれば、カモフラージュできます。

 スーの場合は、お酒を飲みたくて仕方ないのかもしれないですね。

 そんな事を考えながら、僕はひたすら調理を続けました。


「はあ……疲れた……皆もお疲れ様です」


 そして、夕方前には全ての食材が無くなりました。

 まあ、街の人も食べる事からのむ事に変わっています。

 そこら中で、乾杯が繰り広げられていました。


「シュンさん、そろそろ明日の打ち合わせに行って良いですか?」

「スーがあんな感じなので、私達で進めないといけないので……」


 ケーシーさんとテルマさんが僕に申し訳なく言ってきたけど、僕は逆にケーシーさんとテルマさんに申し訳ない気持ちで一杯です。


「あはは、かんぱーい!」

「うごうごうご……」


 お酒を飲みながら不審者を捕まえられるとあって、スーは水を得た魚の様に生き生きとしています。

 いや、酒を得た酔っ払いですね。

 どうやらある程度の所でアオがスーの事を睡眠魔法で眠せるそうなので、それまではスーには守備隊員と共に頑張って貰いましょう。


「シュンお兄ちゃん、シロがケーシーお姉ちゃんとテルマお姉ちゃんを手伝ってくるよ!」

「フランも!」

「ホルンも行くよ」


 ここは、元気よく手を上げて立候補してきた三人に任せましょう。

 僕は、全員に回復魔法と生活魔法をかけてあげてから見送りました。


「さて、僕達は屋台の後片付けをするとしますか」

「お手伝いします」


 僕はトリアさんと一緒に、調理の後片付けを始めました。

 何だかんだで、収穫祭の一日目は無事に終わったみたいですね。

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