散歩の三百四十二話 焼いても焼いても終わりません
ジュージュー。
「シロ、お好み焼き三つ出来たよ」
「シュンお兄ちゃん、了解だよ」
「シュン、お好み焼き十個だよ」
「えー!」
えーっと、只今僕は大混乱状態です。
シロとフランが売り子をしてくれているけど、注文が止まりません。
僕は、ひたすら鉄板に向かってお好み焼きもどきを焼いています。
「くそー、何で全部辺境伯家の奢りにしたんだよ!」
そうなんです、僕のいる屋台で作る食べ物限定ですが、エミリア様が無料にすると言ったのです。
そう、辺境伯様じゃなくてエミリア様が、ですよ。
その為に、大量の注文がきて僕達は超大忙しです。
くるくる、くるくる。
「まんまる焼き、できたよー」
「おおー、流石はホルン!」
そして、ホルンがたこ焼きもどきのまんまる焼きをうまく丸くできるという手際の良さを見せたので、五歳なのに焼き物を任せてしまいました。
更にまんまる焼きという名前を考案したケントちゃんがホルンの焼いたまんまる焼きを「おいちー!」と笑顔で絶賛していたので、余計に街の人が押しかけています。
まあ、ホルンの側でトリアさんが肉を焼きつつ様子を見ているので大丈夫みたいです。
アオもひたすら焼き物を手伝ってくれて、スー達もひたすら野菜を切り刻んでいます。
ケーシーさんとテルマさんの事が気になっていたけど、忙しくて余計な事を考える場合じゃないみたいですね。
「これは凄いな、大盛況じゃないか」
「さらりと、エールを片手に列に並ばないでください!」
何で辺境伯様は、街の人と一緒に列に並んでいるのだろうか?
注文の量を見る限り、どう見ても辺境伯家全員分だぞ。
「無料にしたが、その上で強権発動して料理の割り込みをしたら、街の人に迷惑だろうが。神の供物の前では、誰もが平等だ」
うん、辺境伯様はそれなりにカッコいい事をキメ顔で言っているけど、街の人と乾杯をやりたいと言う欲望が漏れていますよ。
「山車が帰ってきたぞー!」
街の人が通りを指差していますが、領都を一周していた人達が広場に戻ってきました。
そして、エールの詰まった樽を広場に置いていきます。
更に、マリアさんが冷凍魔法を使って樽を冷やしていました。
あっ、嫌な予感がするぞ。
「はーい、街を巡回した神聖なエールですよ。ただし一人一杯までよ」
「だよー!」
「「「うおー!」」」
あああ、やっぱりそうだ。
御神酒を参列者に配るのが確か前世でもあったけど、似たような事が始まってしまったぞ。
エミリア様自らエールを配っているけど、街の人のテンションは更に上がりそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます