散歩の三百二十四話 暴れ出した犯罪組織

 突然の爆発音に、一気に慌ただしくなりました。


「くそ、さっきの奴らとは違う者がいるのか?」

「時限式の魔導具でなければ、その可能性はありますね」


 僕と先代様は、しまったといった表情になりました。

 直ぐにここは動かないと。


「何だ何だ? あの煙は!」

「あなたは屋敷に残って情報収集して下さい。カスアク伯爵家と人神教が暴れています」


 屋敷からビックリした表情の辺境伯家が出てきたけど、エミリア様の話を聞いたら急に表情が変わりました。


「第一戦闘配備をするぞ。防壁の門は閉鎖し、住民の避難誘導を。我が領に入り込んだネズミを、一匹残らず狩り尽くせ!」

「「「はっ」」」


 おおー、すげー。

 あの、いつもグータラしている辺境伯様とは大違いだぞ。

 次々に指示を飛ばしています。


「息子は危機管理能力が優れている。なあに、こうなれば大丈夫だ」

「普段からそうして欲しいんですけどね……」


 いつものだらけている様子と余りにも違うので、僕は思わず苦笑してしまいました。

 さて、こちらも動かないと。


「シロとアオは、僕と一緒に行こう。スーは達はエミリア様について行って。フランとホルンは、万が一の屋敷襲撃に備えてケントちゃんの側にいてね」

「「「はい!」」」

「うむ、シュンも中々の判断だな」


 先代様に褒められたけど、ここは気を引き締めないとね。

 ここからは、大規模戦闘も考慮しないと。

 すると、槍を持ったトリアさんも僕の側に来ました。


「私も一緒に行きます。回復魔法もできます」

「くれぐれも無理をしないでね」

「はい!」


 トリアさんは先代様の娘だから、かなり強いだろう。

 僕は先代様と一緒に、爆発音がした現場に向かいます。


 ダッダッダッ。


「あっ、広場から煙が出ているぞ」

「まあ、何と言うことでしょうか!」


 収穫祭と結婚式が行われる街の広場が、目茶苦茶になっていました。

 アオが作った女神像は勿論の事、今まで準備していた物全てが壊れ果てていました。

 トリアさんは思わず悲しい表情になっているけど、それよりも先にする事があります。


「怪我人の救助と、治療が優先だ。アオは僕と一緒に、周囲の探索も行って」

「シロは、儂と共に聞き込みするぞ。まだ、不審者が側にいる可能性もあるぞ」


 ここからは、手分けして対応にあたります。

 早朝なのが幸いしたのか、広場のセット崩落に巻き込まれた人はいなかった。

 でも、爆風とかで飛んできた破片で怪我をした人がいるので、僕とアオとトリアさんで治療をします。


「うーん、夕方までは特に怪しい人はいなかったわね」


 先代様とシロが聞き込みをしているけど、今の所怪しい人物は見当たりません。


「昨晩も街を巡回しておりましたが、特に不審者は見当たりませんでした」

「そう、か。分かった。周囲の警戒を続けるように」


 祭りが近いのもあるので夜も兵の巡回があったけど、報告した兵曰く異常は何もなかったそうです。

 先代様も、ちょっと悔しそうにしながら兵に指示を出していました。


 と、ここで明らかに怪しい反応が探索魔法にあったぞ。

 あそこだな。


「シロ、商店の屋根の上に誰かいるぞ!」

「見つけた! とおー!」

「ぐっ」


 僕が叫ぶと、シロは大ジャンプをして一気に不審者の前に現れました。

 あっ、もう一つ反応があったぞ。

 アオも気がついたみたいだ。


「八百屋の物陰に誰か……、って魔法を溜めてやがったぞ」

「死ねー!」


 物陰から現れた二人の不審者は、予め溜めていた魔力を僕達に向けて放ちました。

 狙いは、先代様とトリアさんか!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る