散歩の三百二十三話 人神教と突然の爆発音

 祭りを二日後に控えた早朝の事でした。

 何故か辺境伯邸の門の前がざわざわとしていて、多くの兵が集まっていた。

 僕達も朝の訓練をしていたので庭に出ていたのですが、何だろうと思って訓練の手を止めています。


「な、何なんですか、この騒ぎは?」

「はあ、きっとカスアク伯爵家の関係者ね。昨日、辺境伯領に来ていたのを把握しているわ」

「「「えっ?」」」


 呆れた顔でエミリア様が呟いてるけど、流石にスー達はビックリしています。


「カスアク伯爵家の者が不法侵入で拘束されたと王城に伝わってから、直ぐに急ぎの者が辺境伯領に向かっていたのを把握していたのよ。だから、門兵を増強しておいたわ。恐らく、あの冒険者を解放しろと要求していると思うわよ」


 カスアク伯爵家としては至極当然の行動をしただけなんだろうけど、辺境伯家としてはたまったもんじゃないね。

 ここで、先代様がおもむろに立ち上がりました。


「仕方ない。何を叫んでいるか、聞いてくるか。シュン、お前もついてこい」

「えっ? 僕もですか?」

「そうだ。シュンなら冷静な判断ができるだろう」


 何故かおもむろに立ち上がった先代様と共に、僕も門の前に行く事になりました。


「お、来やがったな。獣人の親玉が」

「崇高なる人族に害をなす者が!」


 門の前にいたのは、兵っぽい人物でした。

 というか、コイツらいきなり先代様に喧嘩を売ったのですが。

 先代様から、怒気が膨れ上がっています。

 崇高なる人族ってのが、ちょっと引っかかるなあ。


「そうか。何かおかしいなと思っていたが、お前らは人神教の連中か」

「そうだ! 崇高なる人族以外は、全てにおいて害なる存在だ」

「坊っちゃんが、獣人風情に拘束されているなんて耐えられない。今すぐ解放しろ!」


 あの冒険者も獣人を倒して名を挙げると聞いたけど、何でそんな事をわざわざするのかと思ったよ。

 人神教という、如何にも怪しい宗教の影響なんだね。


「こらー、何をしてる!」


 そして、追加の兵がやってきた所で膠着していた事態が動き始めました。


「ちっ、追加が来やがったか」

「我々を無下にした事を、後悔するんだな」


 門で騒いでいた二人は、脱兎のごとく逃げていきました。

 兵も、二人の後を追いかけて行きます。


「人神教か、面倒くさいものが背後についていたとは。闇組織とも繋がりがあると言われているぞ」

「とてつもなく面倒くさい組織ですね。どう見ても、強硬的な組織ですよ」

「うむ。直ぐに警戒にあたらせ……」


 ズドーン、ズドーン、ズドーン!


 先代様と話をしていたら、突然街の方から爆発音がして煙が上がりました。

 只事じゃない事が起きているのは間違いないぞ。

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