散歩の三百十九話 ちまちまと小物を作ります

 翌日は、辺境伯様とマリアさんも一緒に工事現場に行く事になりました。


「えへへ!」

「あらあら、相変わらずケント様は甘えん坊ですわね」


 因みに、ケントちゃんは満面の笑みでマリアさんに抱っこされています。

 というのも、またもやケントちゃんの危機回避能力が発揮されたからです。


「あなた、今日は勝手な行動をしないで、私とお義理父から離れないで下さい」

「もう少し、お前には辺境伯たるものの指導をしないとならないな」

「はい……」


 というのも、辺境伯様はエミリア様と先代様に挟まれながら、朝からいきなりの説教タイムだからです。

 辺境伯様はとても頭が良くて知識も豊富なのだから、少しは態度を改めて欲しいです。


「ははは、お館様は相変わらずだな」

「今度は母ちゃんに怒られるんじゃないか?」

「というか、あのアザは折檻された痕だろうな」


 街の人も、説教されている辺境伯様を見ても特に気にしていません。

 そして街の人にとって既にマリアさんは先代様の妻扱いなので、辺境伯様がマリアさんに怒られたのを的確に把握していました。

 そんなこんなで広場に到着した僕達は、昨日と一緒に役割分担をしながら活動を始めます。

 僕は昼食の仕込みをしてから、アオの手伝いをします。


「シュン様、本日もお手伝いいたします」


 トリアさんが、今日も手伝ってくれるのがとってもありがたいです。

 よく考えると辺境伯様とトリアさんは兄妹なんだけど、全くと言っていいほど性格が違うなあ。

 そんな事を思いながら、僕は仕込みをしてアオの手伝いに移りました。


「わあ、とても綺麗ですね」

「造花も組み合わせれば、本物みたいに見えるしね」


 舞台には本物の花も使うけど、造花も使って華やかさを演出する事にしました。

 布を上手く組み合わせたり縫ったりするけど、アオは触手を上手く使って造花を作るなあ。

 トリアさんは、作成した造花を職人に渡したりしています。

 その他にも、僕とアオは舞台で使用する小物などを作成したりしています。


「うう、腹減った……」

「あなた、昼食までにはまだ早いですわよ」

「あたたた! 尻尾を引っ張るな!」


 うん、目の前で夫婦漫才が繰り広げられているけど、特に気にしない事にしよう。

 実際に、昼食まではまだ二時間もあるし僕も昼食の準備をするには早い。

 辺境伯様には、このまま我慢してもらいましょう。

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