散歩の三百二十話 まんまる焼き
そろそろ昼食の準備をしようかなと思った所に、獣人が一枚の鉄板を持って僕の所にやってきました。
「あんちゃん、タコヤキってのを作る鉄板はこんなもので良いかい?」
「すげー、本当にタコヤキ用鉄板を作っちゃったよ。しかも一日で」
「ははは、この位俺達にかかれば朝飯前だ」
一度に二十個作れるタコヤキ用の鉄板を見て、僕は本当に獣人のタコヤキ食べたいという気迫を感じてしまいました。
ですので、肉を焼くのをトリアさんにお好み焼きもどきをアオに任せて、僕はタコヤキ作りをする事に。
具材はタコの他にも肉やチーズを使い、ソースは焼きそばソースを使おう。
代替食材を使えば、何とか出来そうだ。
どんどんとタコヤキを作っていくと、ケントちゃんが興味深い表情をしながら僕の料理風景を見ていました。
「まんまる! まんまる!」
「そうだよ。こうやって、まんまるになったのを食べるんだよ」
「まんまるだ!」
早速一皿分出来たので、先代様とエミリア様とケントちゃん分を用意しました。
「ほら、熱いから気を付けるんだよ」
「わーい」
早速ケントちゃんが、フォークでタコヤキを刺して試食に一番乗りをしようとした時でした。
ひょい、ぱく。
「うむ、これは美味いなあ。手軽に食べられるのがいいぞ」
「あー! ぼくのまんまるやきー!」
何と、辺境伯様が横から一つ摘まんで食べてしまいました。
幾らお腹が空いていたとはいえ、これは流石にないでしょう。
試食一番乗りをしようとしたケントちゃんが、思わずしょんぼりとなってしまいました。
「あなた、何て事をしてくれたの!」
「お前は昔から食い意地が張っているが、ここは息子に譲るべきだろうが」
「うふふ、坊ちゃんは昔から変わりませんわね」
「あわわわわ……」
あーあ、超激怒モードになってしまった辺境伯家の方々が、辺境伯様を何処かに引きづっていきました。
この場にいた全ての人も、しょうがないなあという表情になっています。
邪魔者もいなくなったので、改めてケントちゃんの試食開始です。
この騒動で、良い具合にタコヤキもどきも冷めたみたいですね。
ぱく。
「おいしー!」
「良かったですね。ゆっくりと食べましょうね」
「うん!」
ケントちゃんは、満面の笑みで次々とタコヤキもどきを食べていきます。
そんなケントちゃんを、スー達も笑顔で口の周りを拭ってあげました。
「こりゃ、面白いなあ。中身に何が入っているか、食べてからのお楽しみって訳か」
「まんまるだから、まんまる焼きか。ケント様の言いたい事も分かるな」
そして、タコヤキもどきはいつの間にか中に何が入っているかはお楽しみというまんまる焼きというものとして認識されました。
まあ、分かりやすいネーミングだし、ロシアンルーレットっぽい所が面白いのかもしれないですね。
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