散歩の三百七話 僕の弱点は?

 翌朝、僕達は毎朝の訓練から始めます。


「どれ、儂も久々に鍛えるとするか」

「じーじ!」


 僕達とエミリア様とケントちゃんに加えて、何故かやる気満々の先代様も訓練に加わる事になりました。

 うん、分かっていたけど先代様も物凄い筋肉ムキムキだな。


「エミリア様、辺境伯様はどうしていますか?」

「慣れない書類仕事で、頭が疲れたみたいですね。当分起きないと思いますわ」

「情けない、あれっぽっちの書類を処理しただけで疲れ果てるとは」

「ええ、そうですわね。書類の処理速度も遅いので、時間もかかりますし」


 おう、エミリア様と先代様が辺境伯様の事をデスってるよ。

 というか、昨日の書類の量は誰が見ても大変だと思うけどなあ。


「さて、準備運動をしたら各自の改善点を指摘します。シュンから先に言いますね」


 おっと、エミリア様が昨日の手合わせの結果を教えてくれるみたいです。

 もっと強くなる為に、改善点をちゃんと覚えないといけないね。


「シュン、準備運動が終わったら芝生の上に寝そべって下さい」

「あ、はい」


 あれ?

 てっきり何かを話してくれるのかと思ったけど、僕の場合は違うんだ。

 僕は、エミリア様に言われた通りに芝生の上にうつ伏せに寝っ転がりました。


「はい、息を吸って、息を吐いて……」


 良く分からないけど、とりあえずエミリア様の指示に従おう。

 息を吸って、息を吐いて……


「ふん!」


 ボキンボキンボキン!


「がっ、かはぁ!」


 息を吐いた所で、エミリア様が僕の背骨に手を置いて一気に関節の矯正を始めました。

 とっても良い音がなったけど、それ以上に突然やられたからちょっときついよ。


「じゃあ、次は腰ね。はぁ!」


 バキンボキン!


「ぐっ、ぐふ……」

「「「あ、あわわわわ……」」」


 関節を矯正されると分かったから次の衝撃には耐えられたけど、正直言ってかなりきついですよ。

 呻き声を上げる僕を見て、シロ達がちょっと怯えています。


「じゃあ、今度は仰向けになってね。肩を入れなおすね」

「は、はい……」


 その後も、僕はエミリア様にひたすら体の矯正をされ続けました。

 うん、もう今日の訓練は駄目です、動けません……


「ふう、これでよしっと。シュンは、とにかく体が固すぎるわ。柔軟性をもっと高めないと駄目だね。毎日柔軟トレーニングを追加しましょう」

「へぁ……」


 僕の課題はとにかく体が固い事らしいが、毎日体の矯正をされるのは勘弁です。

 とにかく柔軟を一生懸命にやろうと、くたばりながらも心の中で誓いました。


「さて、他の人は柔軟性は大丈夫だから個別に課題点を言うわね」

「「「ほっ」」」


 他の人は体の矯正をされないで済んだので、明らかにホッとしていました。

 いや、僕だって最初に言葉で教えて欲しかったよ。


「よし、じゃあシュンは基礎訓練を終えたら儂と手合わせな」

「えー!」


 そして僕は、やる気満々の先代様に目をつけられてしまったみたいです。

 この場で申し出を断るなんて、出来たらいいなあ。

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