散歩の三百二話 エミリア様の強さ
翌朝から本格的に西の辺境伯領での仕事を始めるのですが、毎朝の訓練は勿論行います。
今日の訓練にケーシーさんとテルマさんを誘ったのは予定通りだったんですが、何故か騎士服に着替えてやる気満々のエミリア様とケントちゃんも中庭にいました。
「ふふ、私達も毎朝訓練しているのよ。今日は一緒に頑張りましょうね」
「がんばりゅ!」
うーん、どの程度の訓練にすれば良いのか分からないけど、とりあえずいつものをやってみましょう。
先ずは、いつも通りに魔力の循環と制御の訓練を行います。
「スーさん、私達にも魔力制御の方法を教えてくれませんか?」
「身体強化がメインですけど、まだ上手く使いこなせないので」
「ええ、一緒にやりましょうね」
ケーシーさんとテルマさんは、早速スーに魔力制御について色々と教わっていました。
同じ歳で貴族令嬢同士だけど、こうして素直に教え合うってのは良いですね。
その後は、軽く格闘訓練を行います。
「とやー!」
「すごいすごい!」
シロとアオのいつもの高速手合わせに、ケントちゃんは大興奮です。
というか、まだ二歳にもなっていないケントちゃんは、どうもシロとアオの動きが見えているみたいです。
「ふふふ、ケンちゃんはとっても目が良いのよ。格闘家としても、将来有望株なのよ」
「いやいや、将来の辺境伯様としての教育が先ですよ」
満面の笑みを浮かべているエミリア様に思わずツッコミを入れてしまったけど、ケントちゃんは確実にエミリア様の血を継いでいますね。
「スーさんの動きは、とても素晴らしいですね」
「でも、剣技は北の辺境伯兵の方に教わったばっかりなんです」
「では、今度は私達がスーさんに剣技を教えますわ」
スーとケーシーさんとテルマさんは、すっかり意気投合してお互いを高めあっていますね。
僕もエミリア様も、思わずニンマリです。
「さて、私はシュンと手合わせしましょう」
「はい、宜しくお願いします」
フランとホルンはいつも通りに二人で手合わせしているので、一人余った僕はエミリア様と格闘訓練を行います。
超一流の格闘家と手合わせできるまたとない機会なので、僕も本気で頑張ろう。
「さあ、いつでもいいわよ」
僕はエミリア様を見て、思わず汗が一筋流れました。
エミリア様は両腕をだらんと下げていて、全く構えていません。
一見すると隙だらけだけど、下手に突っ込んだらあっという間に返り討ちに合いそうです。
ここは小細工無しに、最初から本気で仕掛けます。
「はあっ、せい!」
「良いわよ、どんどん打ち込んてきてね」
僕はエミリア様を目掛けて突きと蹴りを繰り出しますが、エミリア様は最小限の動きで受け止めたり交わしたりしています。
エミリア様の動きを盗むつもりでいたけど、全くそんな余裕はありません。
エミリア様は、とんでもないレベルで強いぞ。
がす。
「ぐはぁ」
「今日はこの辺にしておきましょう。シュンは素晴らしい動きをしているけど、まだ体の使い方が甘いわ。私の動きを盗む前に、自分の動きを直しましょうね」
「そこまでバレていたんですね。流石はエミリア様です」
僕はエミリア様に軽く足払いされた後に、首筋に手刀を当てられました。
エミリア様は、本当にとんでもない強者だぞ。
「さあ、他の方もどんどんと来て下さい。明日、それぞれの改善点を指摘しましょう」
「じゃあ、次はシロがやる!」
「次はフラン!」
汗一つかいていないエミリア様が、どんどんと相手をしていきました。
ここまで完敗すると、ある意味清々しいですね。
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