散歩の三百三話 山積みの書類

「「「はあはあはあ……」」」

「はい、今日はここまでね。朝食にしましょう」


 全員がエミリア様になぎ倒された所で、今日の訓練は終了です。

 スーとケーシーさんとテルマさんは、膝をつきながら荒い息をしています。

 因みにエミリア様は、全員と手合わせしても汗もかかず息も乱れていません。


「キャッキャ!」

「「「まてー」」」


 先にエミリア様との手合わせを済ませていたシロ達とアオは、ケントちゃんとおいかけっこをしています。

 こちらは楽しそうで何よりです。

 流石獣人というべきか、ケントちゃんの逃げ足も中々のものだと思うけどね。


「今日は、皆に書類整理を頼みたいのよ。どっかの誰かさんが、書類を溜め込んでいるのでね」

「ぎくー」


 朝食時に、エミリア様から僕達の今日の予定を教えて貰いました。

 昨日エミリア様に失神された辺境伯様が、またもや顔を青くしています。

 この分だと、大量の書類が山積みになっているのが目に見えています。


「あれー? シロはどうするの?」

「シロちゃんとフランちゃんとホルンちゃんは、私とケンちゃんと一緒に別のお手伝いよ」

「「「「はーい」」」」」


 シロ達はエミリア様と何かやるらしいけど、ここは深く聞かないで正解だろう。

 アオも、シロ達と一緒に行動するそうです。

 と、ここでエミリア様が僕に話しかけてきました。


「シュン、辺境伯様がサボろうとしたら遠慮なく電撃をくらわせて良いわ。辺境伯様は頑丈だから、強めの電撃でお願いね」

「おい、それは勘弁してくれ!」

「「「あははは……」」」


 エミリア様の言い分に、スー達は苦笑しています。

 僕としても、辺境伯様に電撃をくらわせない事を祈ろう。

 という事で、早速辺境伯様の執務室に皆で向かいます。


 どーん。


「辺境伯様、これはどういう事ですか?」

「ははは、どういう事だろうね!」

「シュン、やっちゃいなさい」

「ちょ、ちょっと……」


 バリバリ!


「ギャー!」


 辺境伯様の執務室に入ると、あら不思議。

 机の上が書類の山でした。

 思わずイラッとなった僕は、エミリア様の許可を得て辺境伯様に電撃を放ちました。


「おとーしゃま、かっこわりゅーい」

「うう……」


 僕の電撃を受けて痺れている辺境伯様を、ケントちゃんがツンツンとしています。

 誰が見ても、カッコ悪い大人が床に転がっていますね。


「じゃあ、皆宜しくね。ああ、適度にお茶にしないと辺境伯様は復活しないけど、執事がいるから大丈夫よ」

「シュンお兄ちゃん、行ってくるね!」

「「「いってくるー!」」」


 エミリア様は、僕に言うだけ言ってシロ達を連れて執務室から出ていきました。

 これって、かなり大変なミッションの様な気がするよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る