散歩の二百九十九話 西の辺境伯夫人様
ここで、小さな子どもが執事っぽい人に連れられてきました。
「おかーしゃまー!」
「わっと、ケンちゃんは甘えん坊さんね」
「「「ふふふ」」」
金髪だけど犬耳にふわふわの尻尾を生やした小さな子どもが、女性の足に抱きついてきました。
うん、どう見ても辺境伯様とこの女性の子どもだろうね。
突然現れた子どもによって、場の雰囲気が一気にほんわかとしました。
「奥様、坊ちゃまはどうされましたか?」
「ああ、いつもの事よ。気にしないでね」
「さようでございますか。では、寝室に運んでおきます」
「よろしくね」
そして、熊獣人の執事さんは辺境伯様を軽々と担ぎあげて屋敷の中に消えていきました。
女性と執事さんの話を聞く限り、さっきの乱闘はいつもの事みたいですね。
「じゃあ、皆で応接室に行きましょう。大体の事は分かっているけど、もう少し詳しい話を聞かないとね」
子どもを抱っこした女性の先導で、僕達は応接室に向かいました。
辺境伯様があの状態じゃ、復活するのに時間がかかりそうですしね。
「では、自己紹介をしないとね。西の辺境伯夫人のエミリアよ。スー達とは王城で会った事があるのよ、それ以来の仲ね。この子はケント、未来の辺境伯様ね。ケンちゃん、ご挨拶しましょうね」
「こんちゃ!」
「「「こんにちは!」」」
ケントちゃんとシロ達が元気よく挨拶をしているけど、何かエミリア様の大分情報が省かれた気がするぞ。
「シュンさん、エミリアさんは現国王陛下の娘にあたる元王女殿下なんですよ。私達、下級貴族の娘にも良くして下さいました」
「はっ?」
ちょっと、スー今なんて言った?
目の前にいる女性が、元王女様?
「エミリア様は元々活発な性格でして、護身術がお得意でした」
「そして、西の辺境伯様へ嫁がれる際に更に鍛えられまして……関節技なら国内随一の実力者かと」
「いやあ、照れるね」
「おかーしゃま、おとーしゃまよりつおい!」
ケーシーさんとテルマさんの追加情報に、僕は更に訳がわからなくなりました。
護身術が得意な王女様だけでも、とんでもない事だよね。
それに、ケントちゃんの様子だと辺境伯様が何かをやらかしてエミリア様に怒られるのは日常茶飯事なんだ。
「で、デインの馬鹿の事は置いておいて、何でケーシーとテルマが冒険者をやる事になったの?」
「我が家とテルマさんの所は女性が多くて、カスアク伯爵家が私達の家が他の貴族との縁戚が増えるのを嫌ったのです」
「それで、末の娘ならどうせ良い貴族家に嫁げないし、冒険者になっても問題ないなと圧力をかけられまして……」
「ふーーーん」
あ、ケーシーさんとテルマさんの話を聞いたエミリア様が、物凄く不機嫌になりました。
これは、もしかしなくてもヤバい雰囲気だね。
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